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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2021年12月9日 No.3525 来院に依存しない臨床試験手法(DCT)の普及に向けて -イノベーション委員会ヘルステック戦略検討会

経団連のイノベーション委員会ヘルステック戦略検討会は11月15日、オンラインで会合を開催し、アステラス製薬開発本部開発推進部開発推進第1グループ次長の松澤寛氏と、イーピーエス臨床開発事業本部事業企画推進センター事業企画推進室の富樫宏一氏から、医療機関への来院に依存しない臨床試験手法であるDecentralized Clinical Trial(DCT)について、それぞれ説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ アステラス製薬・松澤氏

松澤氏

オンライン診療をはじめとした遠隔医療や、場所や時間の制限なく健康情報を収集できるIoT機器等の実用化が進展している。治験に参加する患者のなかには、医療機関への通院を負担に感じている人も多いことから、これらのテクノロジーを活用したDCTが注目されている。患者は、医療機関に来院せず、自宅にいながら治験に参加できるので、これまで治験にアクセスできなかった患者にも参加機会を提供できる。実際には、疾患や薬、必要な検査項目、患者のニーズなどに応じて、治験の各プロセスにおいて、来院と自宅等での診療・評価を適切に組み合わせて実施することが想定される。DCTの実施に向けて解決すべき課題も存在する。一例として、非対面および遠隔での本人確認や同意取得、治験依頼者等から被験者への治験薬の直接配送など、DCTの手法に関する規制当局の見解が明文化されていないといったことが挙げられる。患者や医療機関にDCTの手法・メリットを正しく理解してもらうことも重要である。

■ イーピーエス・富樫氏

富樫氏

DCTの普及によって、自宅の近くに治験実施医療機関のない患者や、仕事の都合等で通院が困難な患者であっても、治験への参加を検討できるようになる。結果として、治験に参加する患者が増え、薬を早期に開発することが可能となる。また、医療機関が治験業務としてオンライン診療やeConsent(電子的同意取得)等の実績を積むことで、日常診療でのオンラインヘルスケアの導入も加速すると期待できる。DCTの普及を加速するためには、治験データの保存・管理など、DCTを実施するために必要なITシステムを整備しなければならない。また、患者自身が自宅でITシステムを操作することも想定されている。治験依頼者は、新たに発生する治験対応を負担と感じさせないよう、丁寧にケアすることが求められる。さらに、「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」等には、DCTに関連する要素が言及されていないことも多く、法規制を整備する必要がある。

【産業技術本部】

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