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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2021年12月9日 No.3525 「Better Co-Being ~テクノロジー×雇用・働き方」を開催

新型コロナウイルスの感染拡大を契機に、生活者の健康や働き方に対する意識が高まり、人間が身体的、精神的、社会的に良好な状態であることを意味する「ウェルビーイング」の概念がますます注目されている。経団連が昨年11月に取りまとめた「。新成長戦略」でも、テクノロジーを活用し、生活者一人ひとりの多様なウェルビーイングの実現を掲げたところである。

経団連は、11月8日、オンラインで「Better Co-Being ~テクノロジー×雇用・働き方」を開催し、障がい者の雇用促進、働き方改革について、慶應義塾大学の宮田裕章教授、オリィ研究所の吉藤オリィ所長、日本電信電話の池田円ダイバーシティ推進室室長から、それぞれ説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ 「テクノロジー活用によるBetter Co-Beingの実現」宮田氏

世界は経済合理性だけを追求する社会から、持続可能で公平な社会へ転換することを目指している。そのなかで豊かさの指標にも変化が起きている。従前から用いられてきたGDP(国内総生産)に加えて、生きることの豊かさを測るGDW(国内総充実)が評価され始めている。その際重要なのは、あらゆる側面で世界はつながっているということである。人と人とのつながりのなかで豊かさを考えることが求められる。

これを“Better Co-Being”という言葉で表現している。そこにはデジタルの活用も大きな役割を担う。これまでの社会の仕組みは、一律にモノを作って配る「最大多数の最大幸福」であった。デジタルの活用によって、一人ひとりの価値や状況をデータとしてリアルタイムにとらえ、最適なタイミングで最適な支援を必要とする人に提供する「最大多様の最大幸福」を実現できるようになった。財の性質も変わる。新たな資源であるデータは、排他的に所有することで価値を生む従来の消費財と異なり、人々の信頼を得ながら共有することで産業価値を生み出す。多様な人々の生き方を響き合わせながら共に社会をつくっていく時代に向かっている。

■ 「サイボーグ時代の人生戦略~人から必要とされ続ける生き方」吉藤氏

人はどうすれば孤独感から解放され、より自分らしく生きることができるのか―この問題の解決に取り組んでいる。一人暮らしの高齢者やその介護者、病気で学校に通えない子どもたちが抱える孤独は、生きがいの低下をもたらし、うつや認知症の原因にもなるといわれている。肢体不自由となったALS(筋萎縮性側索硬化症)の人が、眼球の動きだけで操作できるインターフェースを開発し、寝たきりになっても趣味や仕事を続けられるようになった。障がいがあっても、他人に頼り続けるだけの人生ではなく、役割を持って社会に参加し続けることに人は生きがいを感じる。

「障がい」とは、障害者手帳の有無で規定されるものではなく、本人が困っている状態にあるかどうかだと考える。テクノロジーによって、人々の社会参加を妨げている障がいを克服することを目指している。「分身ロボットカフェ」はその取り組みのひとつである。病院に入院している人や寝たきりの人が遠隔操作型ロボットを用いて接客しており、障がいがある人たちの社会参画の機会を創出する。また、お客さまに実際に働いている様子を見てもらい、接客をきっかけに新たな人と人とのつながりや関係性が生まれることも期待する。多様な人たちが知り合い関係性を持つことで、さまざまな生き方の選択肢を持てる社会を実現したい。

■ 「企業における障がい者の活躍推進~遠隔操作型分身ロボット活用の事例など」池田氏

当社における障がい者活躍推進の目的の一つは、その人が持つ障がいの特性からの気づきや、障がいの特性とは関係なくその人が持っている能力をビジネスに活かすことである。また、障がいに対する理解を深めるため、社員研修の講師を担ってもらうなど社員の育成に関わってもらうことも目的の一つとしている。実際に障がいがある方との触れ合いが意識・行動変容につながる。さらに、サステイナブルな社会実現への貢献という観点から、例えば、視覚障がいがある社員に、自社ウェブサイトのアクセシビリティをチェックしてもらい、情報へのアクセスを担保している。直近の取り組みとして、「The Valuable 500」や「ACE(企業アクセシビリティ・コンソーシアム)」に加盟し、世界的なネットワークに参画しながら、雇用だけでなくその活躍を推進することにも注力している。実際に、本社の受付では、障がい者が遠隔操作型分身ロボットを操作して、来訪者の先導や問い合わせ対応などの業務を行っている。分身ロボットの操作性向上を目指した通信制御技術の開発にも取り組んでおり、体が不自由な人や外出困難な人の雇用と活躍の場は今後ますます拡大すると考える。

誰もが将来障がい者になる可能性がある。障がい者と一言でいっても抱える障がいも能力・スキルも人それぞれ異なる。誰もが働きやすい社会を実現するために、一人ひとりが活躍できる仕事を企業は考え、創り出していく必要があり、多様な障がい者活躍推進の取り組みがますます求められている。

【産業技術本部】

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