Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年1月27日 No.3530  提言「Society 5.0時代のヘルスケアⅢ」を公表、牧島規制改革担当相に建議

経団連は1月18日、オンラインと対面を柔軟に組み合わせ、利便性の高い新たなかたちのヘルスケアの実現に向けて、提言「Society 5.0時代のヘルスケアⅢ~オンラインの活用で広がるヘルスケアの選択肢」を公表した。概要は次のとおり。

1.はじめに

新型コロナウイルスの感染拡大は、わが国のヘルスケア分野のデジタルトランスフォーメーション(DX)の遅れを顕在化させるとともに、DXを加速する契機ともなった。経済界でも、新たなかたちのヘルスケアソリューションを創出し、社会実装する機運が高まっている。そこで、デジタル技術を活用したオンラインによるヘルスケアに焦点を当て、実現したい姿を具体的に描き、必要な施策を提案することとした。

2.オンラインヘルスケアの可能性

ライフコースのさまざまな場面で、健康診断、診療、服薬、手術、介護など、その時々のニーズに応じた多様なヘルスケアが必要となる。オンラインによる提供という選択肢が増えることにより、対面では十分に満たされていなかった多様なニーズに対し、新たな解決策を提供する可能性が生まれる。オンラインは対面を置き換えるのではなく、最適な組み合わせにより利便性を向上することを目指すものである。同時に、ヘルスケアの提供側の負担軽減や働き方改革にも資することが期待される。さらには、わが国のヘルスケア産業の新たな成長領域として、こうしたオンラインヘルスケアで世界を牽引する可能性もある。

3.目指す姿と提言

(1)健康管理・増進

スマートフォンのアプリ等のプラットフォーム上で、利用者のヘルスケアデータに基づきその時々の状況にあった適切なレコメンド(助言)が行われ、判断に迷うことなく健康管理ができる。その実現に向けたオンラインヘルスケアサービスの普及支援策が求められる。

(2)診療

オンライン診療を従来の対面診療と組み合わせて活用することにより、患者一人ひとりのニーズに寄り添った、より質の高い医療の提供が可能になる。コロナ禍でのオンライン診療の特例措置の恒久化や、診療報酬上の評価が不可欠である。

(3)調剤・服薬指導

オンライン服薬指導の普及により、診療からのシームレスなオンライン医療が実現する。薬剤師は対人業務に集中し、患者はより丁寧かつ有用な服薬指導を受けることができる。コロナ禍でのオンライン服薬指導の特例措置の恒久化に加えて、薬局の対物業務をデジタル技術の活用によって効率化すべきである。

(4)手術

遠隔手術支援の普及により、地域住民が居住医療圏で受けられる医療の選択肢が増える。質の高い外科医療の均てん化、新しい技術の速やかな社会浸透にもつながる。新しい技術の社会実装に向けて、その費用負担のあり方を考える必要がある。

(5)介護

介護分野のテクノロジーやデータの活用は、要介護者の満足度向上と重症化予防につながる。また、介護職員の業務効率化と負担軽減にもなる。介護現場におけるテクノロジーやデータの活用をより一層促進する必要がある。

(6)治験

オンライン診療などを活用した来院に依存しない治験(Decentralized Clinical Trial、DCT)の普及により、これまで居住地域や仕事の都合で治験に参加できなかった被験者も治験に参加できるようになる。DCTを可能とするよう、規制を緩和すべきである。

4.基盤

オンラインヘルスケアの目指す姿を実現させるためには、それを支える基盤として、ラストワンマイルの輸送手段の整備、データ活用の仕組み構築、国民理解の醸成も必要である。

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経団連は、同提言で描いたビジョンをわが国でいち早く実現するために、関連する業界や政府、地方公共団体、医療界等と連携し、制度面での環境整備と社会受容性の醸成に努めていく。

同提言を牧島規制改革担当相に建議

牧島大臣と南場副会長

経団連の南場智子副会長は1月14日、牧島かれん規制改革担当大臣を訪問し、提言「Society 5.0時代のヘルスケアⅢ~オンラインの活用で広がるヘルスケアの選択肢」を建議した。

新型コロナウイルスの感染拡大は、わが国のヘルスケア分野のデジタルトランスフォーメーション(DX)の遅れを顕在化させるとともに、DXを加速する契機ともなった。

経済界でも、新たなかたちのヘルスケアソリューションを社会実装する機運が高まっている。同提言は、オンライン診療をはじめ、デジタル技術を活用したオンラインによるヘルスケアに焦点を当て、実現したい姿を具体的に描き、必要な施策を取りまとめたものである。

南場副会長は、提言の内容を説明したうえで、「オンラインによるヘルスケアは、健康診断や診療、服薬、手術、介護、治験等、ライフコースのさまざまな場面で、対面では十分に満たされていなかった多様なニーズに対し、新たな解決策を提供する可能性がある。オンラインは対面を置き換えるのではなく、最適な組み合わせにより利便性が向上する。ヘルスケアの提供側の負担軽減や働き方改革にも資するものと期待する。オンラインと対面を柔軟に組み合わせた新たなかたちの利便性の高いヘルスケアの実現に向けて、規制改革推進会議やデジタル臨調で必要な環境整備を力強く推進してほしい」と述べた。

これに対し牧島大臣からは、「『健康』は国民の関心が高い領域である。改革マインドを失うことなく、経済界とも協力しながら、利用者本位・患者本位の視点に立って改革を進める」との発言があった。

【産業技術本部】