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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年2月9日 No.3578 医療保険制度改革の方向性 -社会保障委員会医療・介護改革部会

原田氏

経団連は1月20日、社会保障委員会医療・介護改革部会(本多孝一部会長)をオンラインで開催した。厚生労働省保険局の原田朋弘保険課長から、医療保険制度改革の方向性について説明を聴くとともに懇談した。説明の概要は次のとおり。

■ 制度改革の背景

政府の全世代型社会保障構築会議は、2022年9月末に、子育て世代への支援や、すべての世代が負担能力に応じて公平に支え合う仕組みの強化の必要性等を示した。そのなかで明記された医療保険制度改革に関する論点について、社会保障審議会医療保険部会では、個々の制度見直しについて検討し、22年末に「議論の整理」を取りまとめた。

■ 次期医療保険制度改革の主要事項

今回の制度改革の主要事項は3点である。

1点目は、出産育児一時金(出産時に支給。現在は42万円)の見直しである。

出産費用は毎年1%程度ずつ増加し、全施設の平均で47万円を超えている。子育て世代への支援を強化する観点から、一時金の額を23年4月から全国一律で50万円まで引き上げる。あわせて、子育てを社会全体で支援する趣旨を実現すべく、現役世代が加入する保険制度だけでなく、後期高齢者医療制度からも出産育児一時金にかかる費用を負担する仕組みを導入する。

また、妊婦の方々が適切に医療機関を選択できる環境を整備するため、24年4月を目途に、医療機関等ごとの出産費用やサービス内容等の情報を見える化する。

2点目は、所得の高い高齢者の保険料の引き上げ等、後期高齢者医療にかかる費用負担の見直しである。

後期高齢者医療にかかる費用負担は公費が約5割、残りを現役世代からの支援金(約4割)と後期高齢者の保険料(約1割)で賄っているが、制度導入以降、現役世代の負担が大きく増加している。そこで、当面の現役世代の負担上昇を抑制しつつ、中長期的な人口動態に持続可能なかたちで対処できるよう、介護保険を参考に、今後の後期高齢者の保険料と現役世代からの支援金の伸び率が同じになる負担率の設定へと見直す。その際、後期高齢者の保険料引き上げが必要になるが、低所得者の負担増を避けつつ、高所得者に追加負担を求める「負担能力に応じた負担」となるよう、保険料額の上限の見直し(現行の66万円から25年度にかけて80万円へ引き上げ)や所得にかかる保険料率の引き上げを行う。

3点目は、現役世代が加入する被用者保険における格差是正の強化である。

被用者保険の保険料率は、全国健康保険協会(協会けんぽ)の平均値(10.0%)を超える健康保険組合(健保組合)の数が2割を超えている一方、低い保険料率の組合も存在する。

前期高齢者医療の給付費については、被用者保険における負担能力に応じて、格差を是正する観点から、加入者数に応じて被用者保険の間で調整を行っている。これを是正する観点から、現行の仕組みに加え、「報酬水準に応じた調整」を部分的に導入する。

この結果、報酬水準の高い健保組合の負担は増えるが、報酬水準の低い健保組合の負担は軽減され、負担能力に応じた負担となる。なお、現役世代の負担をできる限り抑制し、企業の賃上げ努力を促進する観点から、既存の健保組合への支援を見直すとともに国費によるさらなる支援を実施する。

これらの制度改正は、23年の通常国会で必要な法案を提出し、施行は24年度を予定している。

【経済政策本部】

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