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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年4月27日 No.3589 企業経営と標準化 -経産省と意見交換/知的財産委員会

畠山氏

渡辺氏

国際標準の獲得を含むルール形成は国の産業競争力に直結する。経団連は提言「産業技術立国への再挑戦」等において、日本が「技術で勝ってビジネスで負ける」状況を打破すべく、システム標準等のルール形成にかかる人材の育成に取り組むとともに、国際的なルール形成に初期段階から関与していくことの重要性を訴えてきた。企業が熾烈なグローバル競争にさらされるなか、わが国がビジネスで勝ち、持続的な成長を実現するためには、経営人材が国際標準の重要性を認識し、産学官一体となった取り組みを戦略的に進めていく必要がある。

そこで、経団連は4月4日、東京・大手町の経団連会館で知的財産委員会(津賀一宏委員長、遠藤信博委員長、時田隆仁委員長)を開催し、経済産業省産業技術環境局の畠山陽二郎局長と渡辺真幸国際標準課長から、企業経営と標準化について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ 経営者に認識してほしいこと

標準化によって市場を獲得、創出するための重要なポイントは、(1)市場獲得を目的としたさまざまな手段をフルに活用できているか(2)そうした手法を戦略的に実践する体制整備やリソース配分ができているか――である。具体的には、市場獲得のための取り組みやオープン&クローズ戦略の活用(ノウハウ、知財、標準化、規制の組み合わせ等)状況を踏まえつつ、標準化の効能を適切に理解したうえで、標準化を経営戦略として位置付け、適切な体制・人材の整備を行っているか――が問われる。

企業競争力の観点に立つと、標準化は、品質や価格・コスト以外に新たな価値を生み出す。同時に、(1)市場創出の主導権確保(2)自社製品の差別化(3)研究開発への好影響――をもたらす。標準化戦略を能動的に展開することによって市場獲得のチャンスが増える一方、後手に回れば、ビジネスリスクとなる。企業経営者には、こうした効能を認識したうえで、標準化に取り組んでほしい。

■ 標準化を取り巻く国内外の現状

国内外のさまざまな環境変化に伴い、良いモノを安くつくるだけでは市場を確保できない時代になっている。とりわけ国際的にも標準化競争が活発化している近年、わが国も、これまで以上に、標準化へ積極的に取り組む必要がある。しかしながら、標準化を通じた市場の獲得を経営計画に盛り込む上場企業は依然として少数派であり、日本企業は標準化を市場獲得のための戦略としてとらえていない傾向が見て取れる。

標準化は、事業部の枠を超える全社横断的な対応が求められ、各事業部に指揮権を発揮できる人物を責任者として据えなければ、標準化の取り組みは成功しない。例えば、CEO直轄のCSO(Chief Standardization Officer、最高標準化責任者)や標準化推進室の設置を求めたい。

■ 今後の標準化戦略の促進に向けて

経産省は、標準化戦略を加速するため、(1)可視化による市場からの評価、統合報告書への標準化体制・活動の記載依頼(2)グリーンイノベーション基金等を通じた標準化戦略のフォローアップ(3)異業種連携規格開発の支援(4)標準化戦略人材の育成支援――など、さまざまな施策を検討するとともに、成功事例の収集・横展開にも努めている。

企業には、標準化体制の整備と市場への発信や、社内・業界内に特化した事例の共有、さらには社内・業界内の人材育成に着手するよう、お願いしたい。

【産業技術本部】

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