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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年5月18日 No.3590 IAASBの最新動向 -金融・資本市場委員会ESG情報開示国際戦略タスクフォース

サイデンスタイン氏(左)と甲斐氏

経団連は4月12日、金融・資本市場委員会ESG情報開示国際戦略タスクフォースを東京・大手町の経団連会館で開催した。国際監査・保証基準審議会(IAASB)(注1)のトム・サイデンスタイン議長、甲斐幸子ボードメンバーから、IAASBの最新動向について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ ISSA 5000

サステナビリティ情報の重要性はますます高まっている。国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)や欧州の企業サステナビリティ報告指令(CSRD)等では開示基準の開発が、保証基準についてはIAASBで国際サステナビリティ保証基準(ISSA 5000)の開発が進められている。

ISSA 5000は、ゼロベースからの開発ではなく、既存の基準である「監査およびレビュー業務以外の保証業務(ISAE 3000)」や「温室効果ガス報告に対する保証業務(ISAE 3410)」をベースに、サステナビリティの要素をより具体的に盛り込むかたちで作成されている。

ISSA 5000の開発にあたって、IAASBは六つの優先事項((1)保証水準〈限定的保証か合理的保証か〉(2)報告規準の適合性(3)保証業務の範囲(4)保証業務における証拠(5)内部統制(6)保証業務提供者が適用する重要性)を定めている。ISSA 5000をサステナビリティの幅広い要素(保証水準、地域・国の固有性、保証業務提供者の特性、採用する開示基準〈ISSBやCSRDなど〉等)に対応できる基準とすることで、世界中で使用される共通のルール(グローバル・ベースライン)を目指す。当該目的達成のため、IAASBは必要なガイドラインを提供する予定である。

IAASBは今後、ISSA 5000の公開草案を7月に公表し、あらゆるステークホルダー(保証業務提供者、情報作成者、投資家、基準設定主体、規制当局等)とアウトリーチ等を通じ適宜適切に連携しながら、2024年末までの最終化を目指す。

なお、サステナビリティ報告に対して、各関係者は、当初から財務報告と同等の品質水準を期待するのでなく段階的な品質向上を目指すべきことを十分に理解する必要がある。最初から高い品質を求めすぎると、結果として当初の目的すら達成できない可能性がある点に留意が必要である。

■ 「継続企業」プロジェクトおよび「不正」プロジェクト

サステナビリティ報告の重要性がより高まっている一方で、財務報告に関する監査基準の整備も引き続き重要である。IAASBでは、特に大きな期待ギャップ(注2)が発生していると認識した「継続企業(ISA570)」と「財務諸表監査における不正(ISA240)」について、現行基準の改正に向けたプロジェクトを進めている。

◇◇◇

意見交換では、サステナビリティ保証基準の作成に関連して、「将来情報に対する保証基準を整備する際の留意点」「国・地域の固有性への対応方法」「開示制度をめぐる企業側・監査側の業務効率化」「サステナビリティ情報に関する後発事象の考え方」等に関して意見およびコメントがあった。

(注1)国際監査基準(ISA)、国際サステナビリティ保証基準等の設定機関

(注2)社会の監査に対する期待と、監査人が実際に行う監査の内容とのギャップ

【経済基盤本部】

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