1. トップ
  2. Action(活動)
  3. 週刊 経団連タイムス
  4. 2023年5月25日 No.3591
  5. 米国のセキュリティ・クリアランス制度に関する懇談会を開催

Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年5月25日 No.3591 米国のセキュリティ・クリアランス制度に関する懇談会を開催 -外交委員会企画部会

永野氏

日本政府は、2022年末に改定された国家安全保障戦略に「主要国の情報保全の在り方や産業界等のニーズも踏まえ、セキュリティ・クリアランス(注)を含む我が国の情報保全の強化に向けた検討を進める」と明記したことを受けて、2月に有識者会議を立ち上げ、今後1年程度をめどに、可能な限り速やかに検討作業を進めることとしている。

こうしたなか、経団連は4月24日、外交委員会企画部会(小久保憲一部会長)を東京・大手町の経団連会館で開催し、法政大学人間環境学部の永野秀雄教授から、米国のセキュリティ・クリアランス制度等について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ 米国のセキュリティ・クリアランス制度の概要

国家機密が外部に漏えいすれば、重大な不利益を被ることになる。国家は機密情報を指定し、機密情報にアクセスできる人物を制限する必要がある。

日本の特定秘密保護法で機密指定の対象となるのは、(1)防衛(2)外交(3)特定有害活動(スパイ行為等)の防止(4)テロリズムの防止――の4分野である。米国ではそれらに加え、国家安全保障に関連する科学的、技術的、経済的事項や、国家安全保障に関連するシステム、施設、社会基盤等の脆弱性・能力等も対象になっている。また、米国の機密情報は、漏えいされた場合に国の安全保障にもたらされる損害のレベルに応じて、機密、極秘、秘の三つの区分に分類されている。

米国のセキュリティ・クリアランス制度では、本人の同意を前提に、連邦政府機関が精神状態、犯罪行為等に関する事項を自己申告等に基づき調査し、個人の適性を総合的に判断する。機密指定は各省が行うが、身上調査の95%は国防カウンターインテリジェンス・保全庁(DCSA)が実施している。なお、現時点では、機密情報の区分に応じて、自己申告の項目が異なるが、今後は機密区分で用いられている最も詳細な自己申告に統一される予定である。

■ 米国での民間企業に対するセキュリティ・クリアランス

民間企業の場合は、個人に対するセキュリティ・クリアランスに加え、施設からの漏えいを防ぐために施設クリアランスが必要となる。さらに当該企業が外国関係の株主等に支配されて機密情報に不正にアクセスされることなどを防ぐために「外国による所有権、管理または影響(FOCI)」に関する規制が設けられている。当該機微情報を扱う従業員に加え、取締役会会長、CEOまたは社長、および担当役員もセキュリティ・クリアランスを保有することがFOCIの要件の一つとなっている。

■ 外国政府等との機密情報の共有

外国の企業との間で機密指定された情報を共有するためには、セキュリティ・クリアランス制度のみならず、政府間で包括保護協定(GSA)や産業保全協定(ISA)を結ぶ必要がある。共有できる情報は、個別の協定の内容による。

(注)政府が安全保障上重要な情報を指定し、当該情報にアクセスする必要がある者に調査を行って信頼性を確認したうえでアクセス権を付与する制度

【国際経済本部】

「2023年5月25日 No.3591」一覧はこちら