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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年5月25日 No.3591 新たな開発協力大綱案 -開発協力推進委員会政策部会

上田氏

経団連は4月19日、東京・大手町の経団連会館で、開発協力推進委員会政策部会(木村普部会長)を開催した。外務省国際協力局の上田肇政策課長から、4月5日に公表された「開発協力大綱」(注)の改定案について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ 改定に至る背景および大綱の基本方針

国際社会は歴史的転換期にあり、(1)気候変動や感染症等の地球規模課題の深刻化(2)自由で開かれた国際秩序への挑戦と分断リスクの深刻化(3)これらと連動した途上国の人道危機等の複合的危機――に直面している。また、新興ドナーによる債務の持続可能性を軽視した借款は、途上国の成長につながらず、透明かつ公正なルールに基づく協調的な協力が国際社会全体に求められている。

こうしたなか、増大する開発資金へのニーズに対応するため、民間企業や市民社会等の多様なアクターとの連携や、新たな資金動員に向けた取り組みがより重要となっている。価値観の相違等を乗り越えて、危機の克服に向けて国際社会が協力することが必要である。わが国はそれを牽引する立場にある。そこで外交の最重要ツールの一つである開発協力を一層効果的・戦略的に活用するため、大綱を改定し、開発協力の新たな方向性を示すことにしている。

改定案では、開発協力の目的として、(1)開発途上国との対等なパートナーシップに基づく、国際社会の平和・安定・繁栄への貢献(2)わが国の平和・安全の確保および経済成長という国益への貢献――を掲げている。また、基本方針として、(1)平和と繁栄への貢献(2)新しい時代の「人間の安全保障」(3)途上国との対話と協働を通じた社会的価値の共創(4)包摂性、透明性、公正性に基づく国際的ルール・指針の普及と実践の主導――を挙げている。

■ 重点政策および具体的な実施

重点政策の1点目として、(1)難民や女性等の脆弱層へ一層の支援を行う「包摂性」(2)気候変動問題等への対応や対外債務残高の増加などに配慮した「持続可能性」(3)経済の多角化等による「強靱性」――を伴う「質の高い成長」の実現に取り組む。特にデジタルや食料・エネルギー安全保障等の分野において、サプライチェーンの強靱化・多様化等を通じ、わが国経済への貢献も達成する。2点目として、「質の高い成長」の前提となる、途上国の平和・安全・安定的な社会の実現、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化に取り組む。とりわけ、自由で開かれたインド太平洋(FOIP)のビジョンのもとで、ガバナンス強化や人道支援・平和構築、海洋保安能力強化等を引き続き行う。3点目として、気候変動・環境、保健、防災、教育等の持続可能な開発目標(SDGs)の実現に向けた取り組みを加速させるとともに、SDGsの達成目標年である2030年以降の国際的な議論への貢献を目指す。

これら重点政策の推進に向け、民間投資を呼び込む「民間資金動員型」政府開発援助(ODA)を導入するなど、民間企業、国際機関、公的金融機関、同志国、市民社会等との連帯を促進する。また、わが国の強みを活かした新たなオファー型協力の強化や、政府・関係機関の意思決定の迅速化など、柔軟な資金協力を可能とする制度への見直しを図る。

さらに、ODAの額をGNI比0.7%とする国際的目標を念頭に置いたうえで、さまざまなかたちでODAを拡充し、実施体制・基盤を強化する。具体的には、(1)外務省と関係省庁・国際協力機構(JICA)間の連携強化(2)デジタルトランスフォーメーション(DX)・グリーントランスフォーメーション(GX)やファイナンス等の新たな開発分野の人材の取り込み・育成促進に向けた産学官の連携強化――に取り組む。

(注)わが国の開発協力政策の基本方針を示したもの

【国際協力本部】

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