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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年5月25日 No.3591 サンタマン ブランズウィック・グループ パートナーが講演 -パブリックCbCR、デジタル課税等の国際課税の諸課題を議論

サンタマン氏

21世紀政策研究所(十倉雅和会長)の国際租税プロジェクト(研究主幹=青山慶二 千葉商科大学大学院客員教授)は4月19日、東京・大手町の経団連会館でパスカル・サンタマン ブランズウィック・グループ パートナー(元OECD租税政策・税務行政センター〈CTPA〉局長)を招き、講演会を開催した。

サンタマン氏は、2012年にCTPA局長に就任して以降22年に退任するまで10年間にわたり、OECD・G20によるBEPS(税源浸食と利益移転)をはじめとする国際課税改革プロジェクトの推進に尽力した。また、OECD、Business at OECD(BIAC)、および経団連税制委員会、21世紀政策研究所が共同で例年秋に開催している国際課税に関する会議に15年の第1回から毎年参加しており、今日の経団連とOECDとの税務に関する強固な関係性を構築することに中心的な役割を果たした。

当日は、昨今協議の進む経済のデジタル化に対応した新たな国際課税ルールや、今後国際課税の舞台において主要なテーマとなるパブリックCbCR(Country-by-Country Reporting、国別報告書)について、サンタマン氏のプレゼンテーションの後、国内の多国籍企業関係者や税理士法人、学識経験者の参加のもと、活発な意見交換が行われた。

サンタマン氏は、デジタル課税に関して、これまでの国際課税をめぐる諸問題の歴史を振り返るとともに、いまだOECDでの検討が続く第1の柱(国家間の利益配分)、日本を含む各国において国内法制化が始まっている第2の柱(最低税率課税)について、世界的な情勢を分析した。

また、現在議論が行われているパブリックCbCRについても解説した。パブリックCbCRとは、BEPSプロジェクトの一環として導入された国別報告書の部分的な公開を義務付けるものであり、EUでは25年から公表が開始されるとともに、オーストラリア・米国等においても導入の検討が進んでいる。同制度の導入により、多国籍企業グループは、法域ごとに、法人所得税の納税額や売上、利益、従業員数等の公開が求められる。このため、NGO・アクティビスト投資家等からの攻撃材料になりかねないとの懸念が生じている。企業としては、パブリックCbCRの開示内容について、コンプライアンス対応に加えて、多様なステークホルダーからの質問や非難に対応できるだけの説得的なストーリーづくりなど、的確な準備が求められる。

さらに、サンタマン氏は、CTPA局長時代から国別報告書はあくまでも税務当局への非公開の報告にとどめるべきと主張してきたと述べた。その一方、世界的な格差拡大への批判の高まりに基づく租税正義(tax justice)運動等を背景に、パブリックCbCRの世界的な導入は不可避となっている、との見解を示した。そのうえで、(1)パブリックCbCRに代表される税の透明性向上を求めるトレンドを踏まえて、企業が税を組み込んで、全社的なレピュテーションリスクを適切に管理するとともに、自社のESGに関するストーリーを構築することが重要になること(2)そのためには、各企業における税務の組織上の重要性を高め、取締役会やCEO・CFOレベルがより密接に関与する必要があること――などを指摘した。

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21世紀政策研究所の国際租税プロジェクトは、今後も国際税務にかかる議論を続けるとともに、経団連税制委員会の今後の国際課税における意見形成、日本企業の問題意識や要望の反映に向けたBIAC・OECDおよびわが国の財務省などとの連携を支援していく。

【21世紀政策研究所・経済基盤本部】

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