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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年6月15日 No.3594 コーポレートガバナンス改革に関する取り組み -金融・資本市場委員会資本市場部会

右から廣川氏、菊池氏

経団連は5月10日、東京・大手町の経団連会館で金融・資本市場委員会資本市場部会(松岡直美部会長)を開催した。金融庁企画市場局企業開示課の廣川斉課長、東京証券取引所(東証)上場部の菊池教之部長から、コーポレートガバナンス改革に関する取り組みについて説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ コーポレートガバナンス・コードの実質化に向けた取り組み(金融庁)

金融庁は4月26日、「コーポレートガバナンス改革の実質化に向けたアクション・プログラム」(アクション・プログラム)を公表した。コーポレートガバナンス改革の実施から10年が経過したが、実証研究において改革の評価は定まっていない。他方、2022年9月に岸田文雄内閣総理大臣がニューヨーク証券取引所(NYSE)で講演したことを受け、海外投資家を含め幅広く意見を聴いてきた。

こうした状況を踏まえ、コーポレートガバナンス・コードやスチュワードシップ・コードの改訂時期については、細則化に陥らないよう、従前の見直しサイクルに必ずしもとらわれることなく、その進捗状況を踏まえて適時に検討することとしている。そこで今回、アクション・プログラムでコーポレートガバナンス改革の実質化に向けた具体的な取り組みを提示することとした。主に、(1)資本コストの的確な把握および収益性・成長性を意識した経営の促進(2)人的資本を中心とするサステナビリティー情報の開示の推進(3)投資家との対話の基礎となる情報開示の充実の検討(4)法制上の課題の解決(大量保有報告制度や実質株主の透明性確保など)――などを盛り込んでいる。

■ 資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた東証の対応について(東証)

東証は3月31日、プライム市場・スタンダード市場の全上場会社に対して、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応等に関する要請を行った。

具体的には、「現状分析」「計画策定・開示」「取り組みの実行」といった一連の対応を継続的に実施するよう求めている。これらは規則上の義務付けではないが、上場会社の持続的な成長と中長期的な企業価値向上の実現に向けて重要と考えられる事項をまとめたものである。投資者からの期待を踏まえ、上場会社は積極的に実施してほしい。

なお、同要請は、株価純資産倍率(PBR)等の特定の指標が一定水準に満たない企業のみを対象にしたものではない。「PBR1倍割れ」は、資本収益性や成長性に課題があることが示唆される一つの目安として提示したものである。1倍を超えている場合でも、さらなる向上に向けて目標を設定することが考えられる。

■ 「従属上場会社における少数株主保護の在り方等に関する研究会」の検討状況(東証)

上場後に支配株主等を有することとなった上場会社において、少数株主保護が適切に機能していないと考えられる事例が散見される。そのため、東証では、グループ経営や少数株主保護についての情報開示をどのように充実させるかを検討している。上場親会社・上場子会社については、すでにコーポレートガバナンス報告書で一定の開示を求めているが、会社ごとに開示内容にばらつきがあることから、各開示項目における記載のポイントを整理することを考えている。さらに、上場会社がその他の関係会社・関連会社の関係にある場合についても、会社間の関係性や位置付け、影響力の程度などがさまざまであることを踏まえつつ、新たに開示を勧奨する方向で検討している。

◇◇◇

意見交換では、「PBRの低さは、業種特性や日本のマーケット環境にも起因する。PBRの数値による形式的な判断ではなく、実効的なスチュワードシップ活動が行われるよう、機関投資家の動きを注視してほしい」「従属上場会社に関する情報開示の勧奨によって、上場企業への戦略投資が抑制されてしまわないように配慮してほしい」等の意見があった。

【経済基盤本部】

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