1. トップ
  2. Action(活動)
  3. 週刊 経団連タイムス
  4. 2023年6月15日 No.3594
  5. 成長志向型の資源自律経済戦略

Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年6月15日 No.3594 成長志向型の資源自律経済戦略 -経産省から聴く/環境委員会廃棄物・リサイクル部会

田中氏

経団連は5月17日、東京・大手町の経団連会館で環境委員会廃棄物・リサイクル部会(関口明部会長)を開催した。経済産業省資源循環経済課の田中将吾課長から、成長志向型の資源自律経済戦略に関する説明を聴くとともに意見交換した。概要は次のとおり。

■ 成長志向型の資源自律経済の確立に向けた三つの問題意識

大量生産・大量消費・大量廃棄を前提とする従来型の「線形経済」から、「循環経済(サーキュラーエコノミー、CE)」への転換が迫られている。3月31日に策定した資源自律経済戦略では、「資源制約」「環境制約」「成長機会」の三つを問題意識として挙げている。

(1)資源制約・リスク

グローバル・サウスでの資源需要増もあり、ベースメタルをはじめとする埋蔵資源は将来的に枯渇することが懸念される。また、資源供給国が偏在し、供給国の政策による供給途絶のリスクがあるなか、コロナ禍や世界的な紛争を契機とする資源調達の寸断が、実際に起こっている。資源自給率の低いわが国にとって、CEに移行する重要性は増している。

(2)環境制約・リスク

昨今、国際的に廃棄物の越境移動に対して厳格な制限が課されていることに加え、国内の最終処分場での量的な制約もあり、廃棄物処理が一層困難となっている。また、カーボンニュートラルの実現には、再生材活用など、原材料産業におけるCO2排出の削減が不可欠である。

(3)成長機会

今後、CE市場への成長資金の流入により、市場規模が大幅に拡大する可能性がある。他方、資源自律経済への対応が遅れると、マテリアル輸入の増大と資源価格高騰によって国富が流出する、あるいは資源調達が難航するなど、多大な経済損失を被るおそれがある。また、CEを担保できない製品は、世界の市場から排除される懸念もある。

■ 経産省としての今後の対応

第1に、競争環境整備として、規制・ルールを見直す。具体的には、「4R (3R+Renewable) 」政策を深掘りし、(1)現行の資源有効利用促進法の対象品目への太陽光パネルやバッテリー等の追加(2)循環配慮設計の拡充・実効化――を検討する。また、製品安全強化策を検討しながら、資源のロングライフ使用につながるリコマース市場を整備する。

第2に、グリーントランスフォーメーション(GX)先行投資支援策のなかで、資源循環分野に今後10年間で約2兆円の投資が検討されていることから、CE投資支援として研究開発・実証・設備投資への支援や、デジタルトランスフォーメーション(DX)化支援等を行う予定である。

第3に、動静脈産業(注)の連携を加速させるべく「産官学連携のCEパートナーシップ」を今夏までに立ち上げる。ここでは、CE実現に向けたビジョン・ロードマップの策定、循環の実態を可視化する情報流通プラットフォームの構築、および循環配慮設計の標準策定といった協調領域の課題解決に取り組む。とりわけ、CEに関して野心的な定量目標を設定し、それを達成するための規制と支援を行うアプローチについても検討・共有していきたい。

◇◇◇

意見交換で、産業界からは、CEへの移行期間においても活力を維持できる施策や支援を要望した。加えて、動静脈産業の連携を促す公正なルール・枠組みづくりの早期実現のため、産業界と継続的に対話するよう求めた。

(注)動脈産業=天然資源を採取・加工し、製品を製造・流通・販売する産業。静脈産業=廃棄物の処理、処分、再資源化を担う産業

【環境エネルギー本部】

「2023年6月15日 No.3594」一覧はこちら