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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年7月6日 No.3597 中島金融庁長官が幹事会で講演

中島氏

経団連は6月13日、東京・大手町の経団連会館で幹事会を開催した。金融庁の中島淳一長官(当時)が「今後の金融行政の課題と方向性」と題して、人的投資の開示の充実や金融経済教育の推進を含め、金融行政全般に関して講演した。概要は次のとおり。

■ 日本経済の状況と開示制度

インフレが世界的な課題となり、各国中央銀行が利上げを進めるなか、日本は他国と比較すると、コロナ後の経済回復や賃上げの動きなどにより消費の伸びも期待でき、状況としては相対的に良い。一方で人口減少のなか、高度人材の海外流出や海外からの人材流入の減少もあり、今後どのように人を確保していくのか、人への投資が重要性を増してくる。

また、企業開示制度の見直しにより非財務情報を充実させるため、有価証券報告書にサステナビリティーに関する新規項目を追加した。海外ではサステナビリティーの記述は気候変動対応が主となるが、日本では人的資本の記載も充実させていきたい。

■ 資産所得倍増と金融経済教育

岸田政権からは成長と分配の好循環、特に金融庁に対して成長と資産所得の好循環の実現を指示されている。そのため金融庁としてNISAの抜本的拡充、恒久化を柱とする資産所得倍増プランを策定した。新NISAは、投資初心者などが利用しやすい長期積立分散投資を推奨するつみたて投資枠と、投資リテラシーのある方などが個別の企業を応援するための枠である成長投資枠で構成されている。日本にも個人投資家を定着させたい。

また資産所得倍増プランのなかで、金融庁としては中小企業の年金基金等を含め、金融機関に顧客本位の業務運営を促すことが重要と考えている。金融機関が投資商品を購入する個人に対して、中長期的に資産が増える可能性の高い投資を勧められるようにするとともに、企業年金基金などでは預かった資金を顧客本位に運用してもらいたい。

金融経済教育について、これまでなかなか学校教育で受ける機会がなかった。そこで、新たな法人として金融経済教育推進機構をつくり、今後、民間とも協力して金融経済教育を推進していく。また、中立的な立場のアドバイザーの認定などの制度も整備していく予定であり、活用してほしい。また事業者の皆さまにおいては、NISAの普及など政府の進める施策への協力をお願いするとともに、業務に支障の出ない範囲で雇用者の資産形成を支援してもらいたい。雇用者の円滑な資産形成を支援することは人的資本への投資そのものであると考えている。ぜひとも前向きに進めてほしい。

◇◇◇

講演後、十倉雅和会長は、「岸田政権は『新しい資本主義』の実現に向けて、『貯蓄から投資へ』をスローガンに資産所得倍増を掲げている。中島長官が講演で指摘された金融行政・政策の役割は、経団連が掲げる『分厚い中間層の形成』にあたり影響の大きいものである」と述べ、出席企業に対し、金融・経済教育への対応を求めた。

【総務本部・経済基盤本部】

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