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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年7月13日 No.3598 日本型標準加速化モデルについて -知的財産委員会企画部会

経済産業省所管の審議会である日本産業標準調査会の基本政策部会では、2022年4月から1年余りの審議を経て、23年6月に「日本型標準加速化モデル」を取りまとめ公表した。経団連が国際標準戦略のあり方に関する検討を進めていくうえで、同モデルは重要な示唆を与えるものである。

そこで、経団連は6月14日、都内で知的財産委員会企画部会(和田茂己部会長)を開催し、経産省産業技術環境局の渡辺真幸国際標準課長から、上記モデル等について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ グローバル市場の変化と国際的なルール形成競争の加速

市場は「価格」×「品質」のみで決まる時代ではなくなり、SDGs等、新たな価値軸が需要者の購買行動を決定する要素となっている。米欧中が標準化を通じた競争力強化の姿勢を鮮明にするなか、わが国としても、標準化を通じて新たな価値軸を生み出し、市場創出につなげていく必要がある。

日本は国際標準化機構(ISO)、国際電気標準会議(IEC)の六つの常任理事国の一角を占めるなど、標準化に関する国際的なプレゼンスや信用は大きく、それらの蓄積を活かすことが可能である。

■ 「日本型標準加速化モデル」と標準化の効能

標準化活動について、これまでわが国が着実に取り組んできた、品質確保を中心とした「基盤的活動」は、持続的に維持しなければならない。そのうえで、価格と品質以外の新たな価値を生み出すという標準化の新たな効能を認識し、市場創出の観点から「戦略的活動」を拡大していく必要がある。標準化を戦略的に活用し、売り上げを増加させた企業の事例も少なくないが、わが国では市場創出におけるツールとしての戦略的な標準化対応の重要性について、認識が十分ではない。

そこで、わが国の企業をはじめとするさまざまな主体による標準化活動について、持続的に維持すべき「基盤的活動」と、今後拡大すべき「戦略的活動」を整理し、その手法や取り組みのあるべき姿を「日本型標準加速化モデル」として提示した。

■ 「日本型標準加速化モデル」実現に向けた課題と施策

「日本型標準加速化モデル」を実現するうえで第1の課題は、人材の育成・確保である。政府は標準化にかかる人材育成の研修を実施している。これに加えて、標準化人材のデータベースの創設、アカデミアとの連携体制の構築に取り組んでいく。

第2の課題は、日本企業の経営戦略における標準化の位置付けの低さである。各社の経営戦略には必ずしも標準化戦略が盛り込まれていない。最高標準化責任者(CSO)の設置や、統合報告書における標準化戦略・体制の記載など、工夫の余地は多々ある。また、22年8月の「価値協創ガイダンス」の改訂や、今後の知財無形資産ガバナンスガイドラインの記載充実等も、投資家との対話においてポイントとなる。

第3の課題は、研究開発段階の標準化戦略が不十分な点である。経産省では、国が実施する研究開発プロジェクトにおいて、標準化の戦略的展開と体制整備のフォローアップの強化に着手しており、今後その取り組みを拡大していく。

企業においても、標準化戦略を促進するため、(1)体制の整備と市場への発信(2)社内・業界内に特化した事例の共有(3)社内・業界内における人材育成――に着手してほしい。

【産業技術本部】

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