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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年10月19日 No.3609 持続可能な社会保障制度に向けた医療分野の重要課題 -社会保障委員会医療・介護改革部会

松本氏

経団連は9月21日、東京・大手町の経団連会館で、社会保障委員会医療・介護改革部会(横本美津子部会長)を開催した。厚生労働省中央社会保険医療協議会(中医協)の委員を務める健康保険組合連合会(健保連)の松本真人理事から、医療分野における当面の重要課題について説明を聴いた。概要は次のとおり。

■ 医療保険制度の持続可能性の確保

2024年度は、医療計画、医療費適正化計画や介護保険事業計画等、医療、介護にかかる各種計画が新たな期を迎えるとともに、医療・介護・障害福祉サービス報酬が同時に改定される節目の年にあたる。現在、厚労省の関係審議会で診療報酬改定や各種計画について精力的に議論している。

医療費が年々伸びていくなか、医療保険制度の持続可能性が懸念される。一方、健康保険組合全体でみた22年度の財政は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた高齢者の受診控えが影響し、高齢者拠出金が減少したため黒字へと転じた。しかし、今後は、団塊の世代がすべて後期高齢者入りする25年を控え、足元ではコロナ禍での一時的な減少からの医療費の反動増もみられ、財政悪化が見込まれる。

■ 医療提供体制の再構築

医療提供体制にはいまだ多くの課題が残る。コロナ禍には医療サービスを受けられない「医療難民」の発生が注目を集めた。患者にとって安心・安全で効率的な医療提供体制を目指すべきである。入院医療では病床機能の分化、連携の推進、外来医療ではかかりつけ医の制度整備が求められる。入院医療に関して、現行の地域医療構想では、各地域における25年の医療需要と病床の必要量について、急性期、慢性期など医療機能ごとの目標値を推計している。総病床数の削減は目標達成できる見込みだが、急性期病床が依然として多く、病床再編を加速する必要がある。外来医療に関して、23年5月に成立した改正医療法により、かかりつけ医機能が法定化された。国民・患者が選択可能なかかりつけ医制度の整備に向けた重要なステップとしてとらえており、今後の具体的な制度設計の議論に対応したい。

■ 24年度診療報酬改定に向けて

医療・介護のサービス提供者側は、物価高騰・賃金上昇、人材確保の必要性から、報酬の引き上げを強く求めている。健保連としては、支払い関係団体間で協力して、社会保障制度の安定性・持続可能性を確保するため、質を担保しつつ効率化・適正化の着実な推進を求めていく。引き続き経団連にも協力してほしい。

■ マイナンバーカードと健康保険証の一体化

政府の進める医療デジタルトランスフォーメーション(DX)については、質の高い、効率化された医療の実現に必要であり、賛成している。24年秋の保険証廃止に向けて、マイナンバーカードと健康保険証の一体化(マイナ保険証)を進めており、オンライン資格確認におけるデータ登録の正確性確保には、健保連も点検等全面的に協力している。事業主には、新規加入者の資格取得届等へのマイナンバーの記載の徹底をぜひお願いしたい。今後は、マイナ保険証の利用率向上が医療DXに向けた重要な課題と考えている。

【経済政策本部】

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