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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年10月26日 No.3610 AI開発・活用の促進に向けた課題や期待 -デジタルエコノミー推進委員会

岡野原氏

経団連ではかねて、AIをSociety 5.0実現の中核技術と位置付け、提言「AI活用戦略~AI-Readyな社会の実現に向けて」(2019年2月19日公表)等を通じ、各領域におけるAI活用を促進してきた。同提言の公表から4年半余りを経て、とりわけ生成AIの活用が国内外を問わず加速度的に進展するなど、AIを取り巻く環境は大きく変化している。

こうしたなか、デジタルエコノミー推進委員会(東原敏昭委員長、篠原弘道委員長、井阪隆一委員長)は、「AI活用によるSociety 5.0 for SDGsの実現に向けて」(23年6月9日公表)で提示した各種論点を深掘りし、あらためて経団連としての意見を取りまとめるべく検討を進めてきた。

そこで同委員会は10月2日、検討の総括として、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、Preferred Networksの岡野原大輔代表取締役最高研究責任者から、わが国のAI開発や活用の促進に向けた課題や政策への期待等について説明を聴いた。概要は次のとおり。

■ 現状~生成AIのインパクト

生成AIは、テキスト執筆やプログラミング支援はもとより、日常生活や社会インフラ、産業等、多様な分野に大きなインパクトをもたらしている。今後、新素材の開発や実験の自動化、自動運転等にも活用される可能性が高い。

AIを支える大規模基盤モデル(注1)は、スーパーコンピューター、ならびにその基礎となる半導体によって構築され、各国とも、AI開発に特化したコンピューターの構築やモデルの開発を推進している。わが国も、需要に見合った高い計算能力を安定的・持続的に供給できなければ、AI開発において国際的な競争力を確保することは困難である。

■ 課題~AI向け半導体をめぐる地政学的情勢

この点、大規模基盤モデルの開発においては、海外の一部の企業が提供する半導体に依存していることが大きな課題である。今後は多様な計算資源の利用を進め、計算資源の安定的な確保や、健全な競争環境の構築を目指す必要がある。しかし、半導体の生産拠点が特定箇所に集中していることから、有事の際には世界的に供給リスクが生じるおそれがある。

■ 政策への期待

大規模基盤モデルの開発にあたっては、計算資源として相当量のGPU(Graphics Processing Unit)(注2)が必要となる。国がAI開発・利用を促進するため、計算資源を安定的に確保する政策を講じることが極めて重要である。

他方、モデル開発のためにインターネット上で大量のデータを収集する際、著作権等の権利を侵害する可能性が指摘されている。しかし現在は、多大な計算コストをかけてモデルを開発した後、特定データのみ抽出、削除するのは困難である。今後、技術的な制約を解消し、学習後に特定のデータを取り除く仕組みを構築する必要がある。さらに、AIの開発においては、クローズドなデータの活用も欠かせない。競争力の源泉となる当該データの安全な活用に向けた技術開発が求められる。

◇◇◇

デジタルエコノミー推進委員会における一連の検討を踏まえ、経団連は10月17日、提言「AI活用戦略Ⅱ~わが国のAI-Powered化に向けて」別掲記事参照)を公表した。

(注1)大量かつ多様なデータで訓練され、さまざまなアプリケーションの基盤として活用できる大規模なAIモデル

(注2)リアルタイム画像処理に特化した演算装置・半導体チップ。AI開発には膨大な演算処理が求められるため、演算装置として用いられる

【産業技術本部】

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