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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年11月2日 No.3611 今後求められる労働基準法制の改革の視点 -労働法規委員会労働法企画部会労働時間制度等検討ワーキング・グループ

安部氏

経団連は10月10日、東京・大手町の経団連会館で、労働法規委員会労働法企画部会労働時間制度等検討ワーキング・グループ(田中輝器座長)を開催した。ソニーグループの安部和志執行役専務から、同社の人事労務に関する取り組みや、労働基準法制に求めることについて聴いた。概要は次のとおり。

■ ソニーにおける人事労務制度

当社は創業来、グローバル化が進み事業の構成が多様に変化するなかでも、個を尊重し続けてきた。2019年に定めたソニーの存在意義(パーパス)に沿った人材理念として「Special You, Diverse Sony」を掲げている。「一人ひとりは特別な存在で、それを受け入れて活躍の場を提供するのがソニー」という意味である。ルールや制度で管理するのではなく、価値観の共有によって、業務を通した成長を「支援する人事」を目指している。会社は社員への期待を伝えるとともに、何を目指しているのかを問い続ける。人事は、社員が会社と対等と感じながら職務を遂行できるよう支援し、現場のマネジメントには、個に向き合った対話を期待している。

人事制度とは会社と社員の対話の手段であり、適切な運用よりも目的が重要である。会社は社員に定期的にキャリアや機会を投げかけ、社員の自主性、オーナーシップを育む。例えば、社員が自らの判断で応募して異動できる社内募集制度や、一定時間を別部門の業務に充てられる社内副業のキャリアプラス制度、高い業績を上げ続ける社員に会社がFA権を付与する制度などである。これらを支えるために、職務をベースとした「ジョブグレード制度」を導入し、職責の変化に応じて基本給を随時改定、上昇、場合によっては減額する仕組みを構築することで、個の尊重、労務費の全体管理、適正な組織運営を目指す。これらの施策が社員のエンゲージメントに寄与しているか、毎年、意識調査を行い、その結果をマネジメントにフィードバックし役員のボーナスに反映している。

■ 今後求められる労働基準法制

私が構成員として参加した厚生労働省の「新しい時代の働き方に関する研究会」は、今後求められる労働基準法制の方向性として「守る」と「支える」を打ち出した。ソニーは、社員の健康確保などを会社が「守る」べきこととして明確にしつつ、社員が働き方やキャリアに関する多様な選択肢のなかから、自ら選べるようにして成長を「支え」ている。こうした選択を容易にするため、労働基準法制の方向性としての「支える」を進め、画一的な規制が緩和されることを望んでいる。今後、法制度の見直しに際しては、一律に規制する部分と、当事者である労使に委ねる部分を整理し、当事者が実態に沿って柔軟に対応できることを期待する。他方、現在の人事管理上の制約をすべて法律のせいにし、労働法制の見直しだけで解決しようとすべきではない。現行の制度下でもできることは多く、企業は社員一人ひとりと向き合う意識をさらに強く持ち、できることに取り組んでいくべきである。

【労働法制本部】

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