経団連は4月5日、企業行動・SDGs委員会(吉田憲一郎委員長、西澤敬二委員長、中山讓治委員長)を東京・大手町の経団連会館で開催した。国連児童基金(ユニセフ)のゴータム・ナラシムハン気候・エネルギー・環境部門グローバルリードをはじめ、ユニセフおよび日本ユニセフ協会の幹部から、気候変動に関するユニセフの取り組みと企業パートナーシップ事例について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。
■ 気候変動によって脅かされる子どもの権利
気候変動は世界の10億人の子どもの権利を脅かしている。洪水による食料不足と衛生環境の悪化は、命を落とす子どもや学校に通えない子どもを生む。特に高い気候変動リスクにさらされているのは、気候変動に責任のない貧しい国の子どもである。しかし、パリ協定に基づく国別削減目標において、子ども特有のニーズや脆弱性を特定しているものは半分以下にとどまる。
気候変動対策においてユニセフは、(1)子どもが水・医療・防災・教育等にアクセスする権利を保障すること(2)自身やコミュニティを災害から守るため、スキルや教育を子どもに提供すること(3)温室効果ガス排出量を安全なレベルまで削減すること――の三つに焦点を当てている。
■ 具体的な取り組み
ユニセフは、特に最も脆弱な立場にある子どもの権利を守ることを使命に、世界190カ国以上で活動している。
2021年に発表した「子どもの気候危機指数」(CCRI)は、子どもの視点から、気候・環境に関するリスクを初めて包括的に分析したものである。複数のリスクがあるなかで、各国は優先順位を付けて対策を講じなければならない。エビデンスに基づく意思決定のためにCCRIを活用してもらいたい。
また、脆弱国や開発途上国を含む122カ国で、政府やパートナーと協力しながら、気候変動関連プログラムを実施している。例えば、(1)子どものための災害リスク削減(ネパール)(2)デジタル格差削減のための太陽光発電導入(アフガニスタン)(3)若者への気候変動対応に関する教育(インド)――である。
さらに、子どもを中心に据えたグローバルな気候変動対策を実現するため、国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)等のグローバルプラットフォームへの若者の参加も提唱している。
■ 企業との協働の重要性
子どもへの支援をユニセフだけで行うのは限界がある。企業と協力することで、より効果的でスケールのある気候変動対策を行うことが可能となる。
ユニセフと日本企業の連携・協働機会としては、(1)企業によるユニセフのプログラムへの資金提供(2)早期警戒システムやデータ分析等、企業が有する技術および知見のユニセフのプログラムへの提供(3)企業がすでに取り組んでいる気候変動対策の推進――がある。
日本企業は、ユニセフが通常リーチできない一般市民や顧客、投資家等、気候変動問題を左右する重要なステークホルダーとのつながりを持っている。「子どもと気候変動」に関するアドボカシーを一層推進し、社会全体の意識・行動変容を主導してもらいたい。
【SDGs本部】