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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2024年5月23日 No.3637 ロシアにおける事業継続と撤退の法的課題に関するセミナーを開催 -日本ロシア経済委員会

経団連の日本ロシア経済委員会(國分文也委員長)は4月23日、東京・大手町の経団連会館で「ロシアにおける事業継続と撤退の法的課題に関するセミナー」を開催した。ALRUD(アルルド)法律事務所の4人の弁護士・専門家から、現在ロシアに進出する日本企業が直面している主要な法的課題について、事業継続と撤退の両面から網羅的な説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ ロシア進出企業の現状

欧州ビジネス協会や、米国商工会議所の統計によれば、ロシアから撤退した外国企業は全体の25%に上る。個別業界の戦略については、自動車製造業では撤退企業が多いが、他の製造業では、サプライチェーンの組み替えなどにより事業を継続しているケースもみられる。ロシアで事業を継続している外国企業の多くは、今後も継続する考えである。その根拠として、欧米のかなりの数の大企業が撤退したことによって競争が緩和されたことを挙げている。

ロシアで事業を継続する外国企業は、欧米諸国による制裁とロシアの対抗措置の双方に細心の注意を払っている。制裁対象者との取引には、相手方の属性や取引の性質に照らし、コンプライアンスの観点から慎重な検討が求められる。他方、2022年10月から、ロシアの対抗措置に違反する取引について、取引自体の無効化を裁判所に提訴する権限がロシア検察に与えられている。これにより、ロシア国内において外国企業と事業を行う際も、ロシアの対抗措置を十分に理解し、違反しないよう注意を払う必要がある。

■ 制裁関連の訴訟リスク

契約上、当事者が外国裁判所に管轄権を定めたとしても、ロシア連邦の商事訴訟手続法に基づき、制裁に関連する訴訟について、ロシア裁判所が管轄権を広く有している。また、外国での裁判や仲裁を禁止する命令を出すこともある。

さらに、外国企業に対する訴訟において、当該企業のロシアにおける子会社は、契約の当事者ではない場合でも連帯責任を問われることがある。これはロシアの裁判所の判決の執行可能性を高めるためである。

外国企業は、ロシアの裁判所の判決の執行可能性を見極める必要がある。ロシアとの関係が強い独立国家共同体(CIS)諸国や中国などでは執行の蓋然性が高い。したがって、これらの国々に資産を保有することは、外国企業にとっては追加的なリスクになる。このようなリスクを軽減させるための手段としては、外国裁判所から起訴禁止命令を取得することや、ロシアにおける訴訟と並行して契約上の管轄裁判所・仲裁機関に訴えることが有効である。例えば、英国企業が英国の裁判所から起訴禁止命令を取得した後、原告がロシアの裁判所での訴訟手続きを取り下げた事例がある。

■ 非友好国企業の撤退

ロシア政府は、対ロ制裁を発動した他の国々と同じように、日本をロシアに対する非友好国として扱っている。非友好国の企業が、株式・持分の売却、証券の取引をする場合、ロシア当局の許可が必要となったため、ロシア国内の資産の処分が極めて難しくなった。

許可プロセスは不透明で、承認までに8カ月も要することがある。売却価格は鑑定額の35%程度に抑えられ、代金の支払いも長期の延べ払いとなるなど、不利な取引条件となることもある。一方、事業継続のためには、従業員の雇用維持などの要件を満たす必要があるほか、利益配当の送金にもさまざまな規制が設けられている。

【国際経済本部】

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