経団連は5月9日、東京・大手町の経団連会館で日本・韓国経済委員会(佐藤康博委員長、岩田圭一委員長)を開催した。慶應義塾大学法学部政治学科の西野純也教授から、総選挙後の韓国政治と日韓関係の展望について説明を聴くとともに意見交換した。概要は次のとおり。
■ 厳しい状況が続く与党の政権運営
4月10日、韓国で4年に一度の総選挙が行われた。その結果、与党「国民の力」が議席数を114議席から108議席に減らす一方で、最大野党「共に民主党」は議席数を156議席から175議席へと増やした。また、新党の祖国革新党が比例で12議席を獲得する躍進をみせた。与党は、大統領の弾劾訴追案の採決を阻止できる100議席以上を辛うじて確保したが、尹錫悦政権は引き続き少数与党として政権運営を行っていかなければならず、厳しい情勢下でのかじ取りが求められる。
■ 選挙結果に関する考察
韓国の選挙では「人物」と「選挙構図」が要点となる。今回の総選挙では、第三極の形成が失敗に終わり、事実上の二大政党制に起因する政治対立の激化に不満を持つ世論の受け皿が不在となった。野党の勝因については、尹政権発足からの2年間の国政運営を厳しく問う政権審判論が選挙を支配したことや、野党が接戦区である首都圏で競り勝ったことがある。他方、与党の敗因として、政治的人材の不足や効果的な選挙戦略の不在等に加え、2022年大統領選挙では与党を支持した20代と30代の国民が、今回の総選挙では尹政権を支持しなかったことが挙げられる。
韓国では、26年に統一地方選挙が、27年に大統領選が予定される。今後、与党保守陣営の立て直しが重要な課題となるだろう。
■ 日韓関係の展望および今後の外交・安全保障政策
今回の総選挙では与党が大敗したものの、韓国の外交・安全保障政策は、大統領権限が強い分野である。したがって、尹大統領在任中は、対日政策が大きく変わることはなく、日韓関係の改善基調は続くと予想される。ただし、いわゆる元徴用工訴訟問題をはじめとする尹政権の対日政策については、韓国内で批判も多い。こうした世論を追い風に、野党からの攻勢が一層強まる可能性がある。また、日米韓3カ国の連携強化が重視されるなか、韓国では、日韓二国間の安全保障協力の強化に関して、依然、批判的な考えが目立つ。
尹大統領は、「3.1節」の演説において、日韓協力の強化に前向きである旨を表明した。25年は、日韓国交正常化60周年の節目を迎えることから、両国関係の深化を期待したい。
【国際協力本部】