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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2024年5月30日 No.3638 オーバーツーリズムの未然防止・抑制等に係る取り組みの現状 -観光委員会企画部会

濵本氏

経団連は4月23日、東京・大手町の経団連会館で観光委員会企画部会(今泉典彦部会長)を開催した。オーバーツーリズムの未然防止と抑制に係る取り組み等について、観光庁の濵本健司参事官(外客受入担当)から説明を聴くとともに意見交換した。概要は次のとおり。

■ インバウンドの現状

訪日外国人旅行者数は、2019年に3188万人を記録した後、新型コロナウイルス感染症の影響により大幅に減少した状態が続いた。22年10月の水際措置の緩和以降急速に回復し、23年暦年では2500万人を超える水準に達した。24年1~3月の累計は約856万人と、第1四半期では過去最高となっている。

また、訪日外国人旅行者による消費額は、平均泊数の伸長(8.8日から10.1日へ)や円安等を背景に、23年は約5.3兆円と過去最高となり、1人当たりの消費単価も21.3万円となった。23年3月に閣議決定した観光立国推進基本計画(基本計画)において、早期達成目標として掲げた消費額5兆円・1人当たりの消費単価20万円を現時点で上回っている。

■ オーバーツーリズムの未然防止・抑制に係る取り組み

他方で、宿泊数は三大都市圏(注)のみで約7割を占め、コロナ禍以前と比較しても偏在傾向が強まっている。また、観光客が集中する一部の地域や時間帯等によっては、過度の混雑やマナー違反による地域住民の生活への影響や、旅行者の満足度の低下への懸念も生じている。

こうした状況を踏まえ、23年10月に開催された観光立国推進閣僚会議において、地方部への誘客を一層推進するとともに、観光客の受け入れと住民生活の質の確保を両立しつつ持続可能な地域づくりを実現するため、地域自身があるべき姿を描いて、地域の実情に応じた具体策を講じていけるよう、国として総合支援を行うことを基本的な考えとする対策パッケージが取りまとめられた。その具体策としては、(1)観光客の集中による過度の混雑やマナー違反への対応(2)地方部への誘客の推進(3)地域住民と協働した観光振興――の三つが柱となる。現在、23年度補正予算事業として、先駆モデル20地域(24年3月に公表)をはじめとする各地域で、オーバーツーリズムの未然防止・抑止に向けた取り組みについて議論・検討が始められているところである。有効な対策の実施には、民間企業との連携も効果的と考えており、各企業の皆さまの積極的な参画・協力をお願いしたい。

■ 持続的な観光地域づくり

地域が、観光地として自ら価値を磨きながら成長を続け、次世代に受け継がれていくためには、環境、文化、社会・経済面での持続可能性が必要である。その際、観光地・観光産業が、収益性の向上を通じて必要な投資・人材育成を進め、持続可能な形で発展していくことが重要となる。観光庁では、「日本版持続可能な観光ガイドライン」に基づき、基本計画の目標である「持続可能な観光地域づくりに取り組む地域数」を100に拡大すべく、自治体や観光地域づくり法人(DMO)等による取り組みを支援している。

同地域数は23年11月時点で、岩手県釜石市や愛媛県大洲市など、31地域となっている。オーバーツーリズム対策と同様に、各企業の皆さまの積極的な参画を得つつ、取り組みを進めていきたい。

(注)埼玉県、千葉県、神奈川県、東京都、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県を指す

【産業政策本部】

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