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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2024年6月13日 No.3640 垂 前駐中国大使が幹事会で講演

垂大使

経団連は5月14日、東京・大手町の経団連会館で幹事会を開催した。前駐中国大使の垂秀夫氏が「『習近平中国』をどう見るか」と題して講演した。概要は次のとおり。

■ 新しい中国を体現する習近平体制

3期目に入った「習近平体制」を評価する際、マスメディア等ではよく「異例の」という言葉が使われるが、これはこれまでの視点にとらわれた見方である。習体制は、それ以前の「鄧小平体制(これには江沢民、胡錦濤時代も含まれる)」とは全く異なる新しい体制であることを認識する必要がある。

すなわち、「鄧体制」においては、経済成長を第一に掲げ、中国共産党による指導の正当性を高い経済成長率に求めていた。一方「習体制」は、「強い中国をつくる」ことを第一に掲げ、(1)国防(2)食糧(3)生態環境(4)エネルギー(5)経済産業――の五つの要素からなる「国家の安全」を最優先に考えるようになった。

こうした変化は、中国に対する評価の基軸として考える必要がある。例えば、中国の経済成長が鈍化している点を捉え、習体制がうまくいっていないと考える見方もあるが、現在の中国においては、「国家の安全」に関連する五つのテーマが重要な政策課題である。この点習氏は、国内における暴動やデモの減少、環境問題の改善といった点に表されるように、着実な成果を上げ、絶大な権力をもつ指導者の地位を盤石なものにしてきたと理解することができる。

■ 米中関係

米国と中国の関係についても、「国家の安全」の観点からみる必要がある。中国は現下の国際秩序について、「合理的でも公平でもない」と主張しており、「強い中国」を志向する立場から、現在の国際秩序の主導者たる米国に対してチャレンジしている。これは、鄧氏が強調した「韜光養晦(才能を隠して、内に力を蓄える)」の融和的な外交方針から、戦狼外交に転換したということである。実態として米国と中国は、直接的な衝突を避けながら、「闘争」と「安定」を繰り返している。

■ 日中関係

中国からみると、米国の存在が大きく、日本はその陰に隠れて姿が見えにくい状況にあるといえる。歴史的な関係も深く、地理的にも中国に近い日本が、中国との関係をしっかりと構築できないままでいるのは望ましい状況とは言い難い。「強い中国」を志向する中国との関係構築は、「国防」、とりわけスパイ防止などの政策において、さまざまなリスクも孕むものではあるが、関係構築を戦略的に進めていくことは不可欠である。日中韓首脳会談などの機会を捉え、日本としてプレゼンスを発揮し、中国との関係構築・協力を模索していくことが求められる。

【総務本部】

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