1. トップ
  2. Action(活動)
  3. 週刊 経団連タイムス
  4. 2024年6月13日 No.3640
  5. ASEANの自助努力を支える連携・協力を

Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2024年6月13日 No.3640 ASEANの自助努力を支える連携・協力を -アジア・大洋州地域委員会

経団連は5月16日、東京・大手町の経団連会館でアジア・大洋州地域委員会(原典之委員長)を開催した。国際協力機構(JICA)の山田順一副理事長から、日ASEANのパートナーシップ強化に向けたJICAの取り組みについて説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ ASEANの自主性、自立性、一体性を高める支援を強化

2024年のASEAN諸国における意識調査(毎年実施)では、「最も経済的な影響力のある国」は中国が59.5%である一方、日本は3.7%と存在感の低下がみられる。しかし「信頼度」は日本のみが対前年比でポイントを上げている。日ASEAN間の貿易・投資は一定の水準にあることから、双方にとって依然重要なパートナーといえる。

JICAの活動においてASEANの重みは増している。成長する経済、地政学的重要性、膨大な開発ニーズ、人的交流、そして日本との深い絆がその理由である。ASEANは、日本の自由で開かれたインド太平洋(FOIP)においても中核を成すことから、JICAは地域の平和、安定および繁栄のために、ASEANの自主性、自立性、一体性を高める支援を強化している。成長するASEANをパートナーとし、地域内にとどまらない開発支援や地球規模課題にも共創を軸に取り組んでいく。

■ 交通インフラ整備、人材育成、民間連携などでASEANの連結性向上に貢献

JICAは23年9月に岸田文雄内閣総理大臣が発表した「日ASEAN包括的連結性イニシアティブ」のもと、ハード・ソフト両面でASEANの連結性向上に取り組む。年間1兆円近いASEAN向け支援のうち、鉄道を中心とした運輸交通セクターが過半を占める。中国の支援により、中国とつなげる南北の交通インフラ整備が進む。JICAはASEANの一体性、FOIPやASEAN自身が発表した「インド太平洋に関するASEANアウトルック協力のための共同声明(AOIP)」の実現のために、ASEANを東西に貫く東西経済回廊、南部経済回廊や港湾の整備などを通じ、ASEANの連結性向上に取り組んでいる。

アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)への貢献としては、再生可能エネルギーを中心に円借款の累計実績は119件、承諾額は約1兆円に上る。また、日ASEANサイバーセキュリティ能力構築センターにおいてデジタル・コネクティビティにおける人材育成と技術指導を行うほか、海上保安庁と連携した技術指導や巡視船の供与による海洋協力も行う。加えて、投資環境改善にもつながる法整備支援もJICAの使命である。

23年12月に「JICA-ASEAN知の共創・連結性イニシアティブ」(JAKCCI)を発表した。互いに学び合い共に成長する人材と知の循環を生み出すことを目指し、今後3年間でASEAN域内の5000人の人材を育成する。具体的には、ASEAN各国と日本の大学を結ぶネットワークの構築や、タイでの高専教育支援、日越大学への支援、ベトナム戦略的幹部研修プロジェクトなど、多岐にわたるプログラムを展開している。

ASEANとの深い絆の礎となっているJICA海外協力隊は、日本では得られない経験を積むチャンスである。民間企業の現職参加や隊員経験者の採用を積極的に考えてもらいたい。

■ インフラ支援を成功に導くために

中国は、一帯一路を掲げ各国への融資を拡大し、ピーク時の16年ごろには日本のODA総額に迫る約170億ドルとなった。ラオス、カンボジアなどは中国への債務が積み上がっている状況である。

中国とは異なる日本の支援の強みは、10年、20年先を見ながら長期的な観点で計画を策定し、法律や制度・政策といったガバナンス能力の向上とあわせて真に必要なものを支援していくことである。過去の事例に学び、人材育成、環境問題にも留意する必要がある。ドライビングシートに座っているのはASEANの国々であり、われわれはその自主性、自助努力を尊重し、協力するという理念をあらためて高く掲げたい。

【国際協力本部】

「2024年6月13日 No.3640」一覧はこちら