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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2024年6月13日 No.3640 ジャパン・ソサエティーと懇談 -アメリカ委員会・連携強化部会

経団連のアメリカ委員会(澤田純委員長、早川茂委員長、植木義晴委員長〈当時〉)と同連携強化部会(豊川由里亜部会長〈当時〉)は5月21日、ジャパン・ソサエティーのメリット・ジェイノー会長とジョシュア・W・ウォーカー理事長の来日の機会を捉え、東京・大手町の経団連会館で懇談会を開催した。説明の概要は次のとおり。

■ ジェイノー氏

世界が未曽有の不透明性に包まれる昨今、経済界の専らの懸念は、地政学的リスクである。しかしこのようななかでも、米国経済は非常に強靭である。実際、米国の個人消費は堅調であり、インフレ率も下がりつつある。加えて今後は、AIが米国経済の下支えになると考えられている。米国経済の歴史には珍しく、軟着陸の可能性がますます現実味を帯びてきた。

それでも、来たる大統領選挙を前に、米国民の気持ちは沈んだままである。ある世論調査によれば、米国民の約75%が、「米国は間違った軌道に乗っている」と考えている。大統領選の主な争点は、米経済と生活の質向上(最重要項目)、人工妊娠中絶、気候変動対策、国境の治安、そして外交である。国境の治安は、ドナルド・トランプ前大統領に言わせれば、ジョー・バイデン大統領の最大の弱みである。外交については両者共に、経済面、特に経済安全保障の面から、中国への対応の必要性を感じている。しかし、実際のアプローチには、大きな違いがある。まず貿易について、トランプ氏は、中国以外の国からの全輸入品に一律で10%、中国からの輸入品に一律60%以上の関税を賦課することを表明している。一方、バイデン大統領は、通商法301条に基づいて、中国製の電気自動車やリチウムイオン電池など限定した品目を対象に、関税を最大で100%に引き上げる方針を打ち出した。これらの物品の米中貿易に占める割合は約4%に過ぎず、特定の製品を狙い撃ちした措置である。ピーターソン国際経済研究所によれば、トランプ氏の主張するような一律の関税賦課は、米国のGDP1%以上に相当するインパクトがあり、特に貧困層には負の打撃となると警告している。大統領選を含む今後の展開が注目される。

■ ウォーカー氏

日米関係の強化に当たって、ワシントンDCの政治にばかり注目していてはいけない。全米各州を含めて全体を俯瞰することが重要である。

大統領選は、州や自治体レベルの動向が結果を左右する。同様に、日米関係強化のカギを握るのも各州である。この点、4月の岸田文雄内閣総理大臣の訪米時、ノースカロライナ州の日本企業や大学を訪問したことは素晴らしかった。経団連ミッションの各州への訪問時にも、日本企業の投資が大歓迎されていることを感じられたことと思う。

日米は、軍事、経済、文化、スポーツなど、あらゆる面で関係を深めている。ただ、日本企業の米国でのプレゼンスは、韓国、ブラジル、フランスなどに比して、かつてほど目立たなくなっている。日本は、アニメや漫画、質の良い製品など、その多くが米国に溶け込んでいるにもかかわらず、必ずしもそれらが直接的なビジネスの機会につながっていない。ソフトパワーを生かしたパブリック・ディプロマシー(広報文化外交)を展開すべきである。ジャパン・ソサエティーは日米の懸け橋として、ビジネス、政策、文化、教育、語学などあらゆる分野においてプログラムを提供している。今後も両国間の理解促進に寄与し、強固な友情を育んでいきたい。

【国際経済本部】

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