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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2024年6月20日 No.3641 科学技術イノベーションの国際連携・協力に係る諸課題 -イノベーション委員会企画部会

大土井氏

経団連は5月21日、東京・大手町の経団連会館でイノベーション委員会企画部会(田中朗子部会長)を開催した。文部科学省科学技術・学術政策局の大土井智参事官(国際戦略担当)から科学技術イノベーションにおける最近の国際連携・協力に係る諸課題について説明を聴いた。概要は次のとおり。

■ 国際連携の強化が必要な日本の研究活動の現状

日本の研究活動における国際連携は、主要国と比べてあまり進んでいない状況にある。2019~21年の日本の国際共著論文数は、英国やドイツの3分の1程度である。また、米国の主要な国際共著相手国トップ10の順位変動を見ると、工学や化学、基礎生命科学などの6分野で日本は軒並み順位が下がっている。

研究人材の国際化も大きな進展がない状況にある。米国や英国は、多くの留学生を受け入れているが、日本は受け入れも送り出しも多いとは言い難い。また、大学の外国人教員の割合は、米国や英国が5~6割程度であるのに対し、日本は1割未満である。大学の執行部を含め、教員の国際化が進んでいないことは課題と考えられ、今後、国際化を進める必要がある。

■ 国際連携における各国の戦略的なスタンス

一方、昨今の地政学的な国際環境の変化に伴い、各国の科学技術政策における国際連携はより戦略的になりつつある。22年の米国の国家安全保障戦略では、テクノロジーが地政学的競争上、重要であるとしたうえで、気候変動、食料不安、伝染病等の共通課題の解決については、地政学的ライバルを含め、建設的に協力しようとするいかなる国とも協力することが示されている。

22年のEUの経済安全保障戦略にも、(1)Promoting=競争力を高める(2)Protecting=経済安保上のリスクから守る(3)Partnering=経済安保上の懸念や利益を共有する幅広い国々と連携する――という戦略的な姿勢が示されている。

オープンな研究環境は国際的な研究活動を行ううえで大前提であるが、これを不当に利用しようとする組織や国が存在しているため、戦略的に国際連携していくことが重要である。

■ 研究インテグリティと研究セキュリティの強化の必要性

開放性のある研究環境を守り、各国と国際連携を促進するには、研究インテグリティと研究セキュリティを強化する必要がある。研究インテグリティとは、研究活動における健全性・公正性を確保するための行動規範を遵守することである。具体的には、ある企業や研究機関に所属する研究者がどこの国の組織と研究を行って対価を得ているかといった研究活動情報をオープンにすることである。研究セキュリティとは、外国からの不当な影響への対応のことである。23年5月のG7仙台科学技術大臣会合でも、研究セキュリティと研究インテグリティの取り組みによる信頼ある科学研究の促進について議論され、参加国と共通認識が得られている。

研究環境の開放性の確保と研究セキュリティの強化はトレードオフではなく、両立するものである。そのための手法を確立すべく、各国とも検討を進めている。

■ 今後の論点

文科省の国際戦略委員会では、今後こうした認識のもと、グローバルな視点で科学技術政策を戦略的に実行し、国際社会との連携・協力を強化すべく、次の3点について議論する予定である。

  1. (1)開かれた研究環境を守ることを目的とした、研究インテグリティや研究セキュリティの確保のための必要事項

  2. (2)国際連携や頭脳循環を促進するための必要事項

  3. (3)グローバルに活躍する研究者を確保・育成するための必要事項

【産業技術本部】

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