経団連は5月13日、提言「産業データスペースの構築に向けた第2次提言」(第2次提言)を公表した。「産業データスペース」は、企業・業界・国の垣根を越えて信頼性の高いデータを連携する仕組みであり、本提言は2024年10月に公表した「産業データスペースの構築に向けて」(第1次提言)を踏まえ、その実現に向けた具体的な施策と推進体制を提示している。提言策定の背景と概要は次のとおり。
■ 提言策定の背景
政府内の各省庁や民間団体等では、データ連携・利活用の取り組みが個別に行われ、横断的な連携は十分とはいえない。また、国際連携に関する考え方や必要な機能要件に関する統一見解も確立されていない。こうした状況を受け、政府のデジタル行財政改革会議では、新たな法制度の必要性も含め、データ利活用制度のあり方に関する検討が進められている。
このような背景のもと、経団連は、産業データスペース群の構築を通じて、デジタル技術を中核とした新たな価値創造のネットワークである「デジタルエコシステム」を実現すべく、第2次提言を取りまとめた。
■ 提言の概要

(図表のクリックで拡大表示)
第一に、デジタル庁が司令塔となり、産業データスペース群の全体像を示すとともに、政府として統一的な戦略と工程表を早期に策定・実行すべきである。
第二に、デジタル庁は、産業データスペースの基本構造である「3層構造」(図表参照)を念頭に、「個別のユースケース(利活用シナリオ)に依存しない共通要件」(共通枠組み)と「個別要件」を明確に区別し、共通枠組みの整備を優先的に進める必要がある。
第三に、信頼ある自由なデータ流通を実現するために不可欠な「トラスト基盤」の整備が求められる。デジタル庁は、信頼性を保証する仕組みである「トラストサービス」の考え方を整理・体系化し、制度・技術・運用面での改善を図るべきである。特に、国際的な相互運用性の確保が求められるトラストサービスについては、EUをはじめ諸外国と具体的なニーズに基づき、政府間協議を深めていくことが重要となる。
第四に、「ユースケースの創出」も重要である。中小企業を含むユーザー企業の参加を促すため、特に社会的・国際的ニーズの高い環境分野において、既存の取り組みを基にプロトタイプ化を進め、成功事例を創出することが有効となる。さらに、国際展開も視野に入れ、EUやASEAN等の同志国・地域を巻き込んでいくことが戦略的に重要である。
第五に、これらの取り組みを迅速に進めるためには、官民が緊密に連携した推進体制の構築が不可欠である。経団連は、デジタル庁や関係省庁・団体と連携し、「デジタルエコシステム官民協議会」(仮称)の設置に向け、具体的に調整を進めていく。
わが国における産業データスペース群の構築は喫緊の課題である。政府は、25年夏に策定予定の各種政策文書に本提言の内容を適切に反映させ、必要な予算・人員の確保を含む所要の措置を講じるべきである。
経団連としても、政府や関係団体に対し、官民推進体制の構築に向けた連携と協力を積極的に呼びかけていく。
【産業技術本部】