経団連は4月15日、次期科学技術・イノベーション基本計画に向け、「Re:Genesis-科学技術・イノベーションで次代を創る~次期科学技術・イノベーション基本計画に向けた提言」を公表した。
本提言では、科学技術の使命を国民の安心・安全・ウェルビーイングの確保であると改めて位置付けたうえで、現下の複雑な国際情勢等をはじめとした構造的課題を乗り越えるための抜本的な政策の再構築が必要であると訴えている。とりわけ、国際的な地位の低下や経済安全保障への対応の一環として、わが国の「自律性」と「不可欠性」の観点から重点領域を定めつつ、研究力やイノベーション力の強化を図るべきとした。持つべき視点と具体的な改革内容は次のとおり。
■ 三つの視点
1.重点領域の考え方の転換による戦略の再構築
「自律性」と「不可欠性」の観点から、限られた人的資源・予算等を社会課題や経済安全保障に資する技術へ集中的に投入すること。「自律性」の観点からは、AIやフュージョンエネルギー、バイオ、宇宙技術など、「不可欠性」の観点からは、サプライチェーンの維持・強化に必要な素材・材料、技術等を優先領域とすべきである。
2.研究力のさらなる強化
競争的資金である「科学研究費助成事業」(科研費)の早期倍増や基盤的経費である運営費交付金の拡充などにより、研究者が自由に挑戦できる資金と時間の確保を目指す。
3.イノベーションを生み出す土壌の再耕
イノベーションの不確実性を考慮し、「選択と集中」よりも「戦略と創発」を重視するとともに、多様性と流動性を高める人的環境、協創のための場の設定、インフラ整備が必要である。
■ 七つの改革
1.政策の遂行体制の強化
総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)の司令塔としての総合調整機能と、評価・分析を行うシンクタンク機能の強化。
2.実施組織の役割分担の再定義
国・大学・企業・研究開発法人の役割分担の整理。
3.政府研究開発投資の拡充および配分方法の再検討
大学のトップ校支援の加速(高さの引き上げ)と、大学の統廃合・マネジメント改革を前提とした基盤的経費の拡充等(裾野の拡大、図表参照)。

(図表のクリックで拡大表示)
4.人材の獲得・育成方法、評価の再考
海外・日本への留学生数の拡大、企業における博士号取得者採用の積極化。
5.連携を通じた協創強化、社会的課題解決への貢献
産学連携に当たっての研究インテグリティ・セキュリティの確保、人材流動化のためのクロスアポイントメント等の積極的活用。
6.国際共同研究、国際的な連携の活用
海外研究者の招聘、国内研究者の国際的プレゼンスの向上、国際的なルール形成への参画等。
7.社会的理解の醸成と普及啓発・広報の充実
理数・情報教育等の充実と研究を目指す人材が数多く輩出される環境の構築。経済界としても、サイエンスコミュニケーションの重要性を認識し、わが国において、研究者が社会から一層尊敬され、自ら研究を目指す人材が数多く輩出される社会の構築に貢献。
【産業技術本部】