経団連の髙島誠副会長・ヨーロッパ地域委員長、齋藤洋二同企画部会長らは4月9日、東京・大手町の経団連会館で、スイス国民議会のマヤ・リニカー議長率いる議員団一行と懇談した。スイス側の発言概要は次のとおり。

リニカー氏(左から7人目)
日本とスイスは、共通の価値観を有する重要なパートナーである。
昨今の米国による関税政策は、世界経済全体に大きな影響を及ぼしている。スイスとしては、世界経済の繁栄と安定のため、開かれた市場、法的安定性、ルールに基づく貿易体制を引き続き維持することが重要と考えている。不確実性が高まるなか、日本をはじめ信頼できるパートナーがますます重要になっている。
両国は、2009年に発効した日スイス経済連携協定(EPA)のもと、経済的な結び付きも強固であり、日本はアジアで最も重要な貿易相手の一つである。他方、日スイスEPAの近代化の議論は進んでいない。われわれは協力を拡大したい。
わが国はサステナビリティを重視しており、サーキュラーエコノミー(CE)について日本企業と連携できる可能性がある。スイスでは、プラスチックを種類ごとに回収しており、ポリエチレンテレフタレート(PET)のリサイクル率は約8割である。また、プラスチックを石油に戻す実証プロジェクトが行われており、今後さらに投資を拡大していきたい。
エネルギーに関しては、水力と原子力が主要電源となっている。原子力発電所については、17年に国民投票を実施し、新規建設の禁止を決定した。現在は4基が稼働中だが、そのうち2基は近い将来に廃炉予定である。国際情勢の変化による電力供給の不安定化を受け、十分なエネルギー源確保のため、現在、新規原子力発電所の建設禁止を撤回すべきか、核廃棄物処理の問題を含め、政府内で議論を重ねている。国民のなかには懸念を持っている人もおり、議論の行方はまだ見通しが付いていない。太陽光を含む再生可能エネルギーも拡大する方針だが、再エネのみで需要の増加分を賄うことはできない。スイス政府としては、全ての技術に対してオープンな姿勢を取っており、今後どの技術を追求していくべきか具体的な検討を進める。
デジタル分野でも日本との協力深化が期待される。今後、AI、量子、ロボット工学、半導体等の分野で協力を加速したい。AIについては、個人情報や人権の保護は必要であるものの、イノベーションを阻害することのないよう、過度に規制しないよう配慮することが重要である。
【国際経済本部】