
チミーノ氏(左から2人目)、マルシアージ氏(同3人目)
経団連の東原敏昭副会長・ヨーロッパ地域委員長、髙島誠副会長・同委員長、齋藤洋二同企画部会長は4月14日、東京・大手町の経団連会館で、イタリア産業連盟のバーバラ・チミーノ副会長、ジョルジョ・マルシアージ航空宇宙経済委員長らと懇談した。イタリア側の発言概要は次のとおり。
イタリアでは家族経営の企業が多く、9割以上が中小零細企業である。イタリア産業連盟は209以上の業界団体・地域団体がメンバーであり、合計500万人以上の労働者を代表している。2024年6月に就任したエマニュエル・オルシーニ会長のもと、中小企業の輸出促進や外国からの投資誘致、産業界の意見の表明のみならず、会員企業の職業訓練にも取り組んでいる。
新体制の欧州委員会は、域内産業の競争力強化に向け、「競争力コンパス」と題する戦略を発表し、脱炭素と経済成長の両立を図る「欧州グリーンディール」における規制の簡素化を掲げている。
また、EUは域外との貿易の46%を自由貿易協定(FTA)でカバーしているが、そのネットワーク拡大に取り組んでいて、イタリア産業界としてもこの動きを支持している。特に、最近合意に至ったメルコスール(南米南部共同市場)との経済連携協定(EPA)や、年内妥結を目指す交渉が進んでいるインドとのFTAの動向に関心を持っている。19年にすでに発効した日EU・EPAは成功例であり、イタリア企業も多く活用している。
最近の米国の通商政策によって、世界貿易の不確実性が高まっているが、イタリア産業界としては、引き続き自由貿易が重要であることに変わりない。また欧州にとって米国は引き続き重要であり、米国を排除すべきではない。互恵的な解決策を模索すべく、米国とも対話を継続していく必要がある。
加えて、自由な貿易投資を維持するためには、世界共通の一定のルールが必要であり、多国間貿易体制の中核を成す世界貿易機関(WTO)の改革を推進していくことが求められる。途上国の経済成長が進み、それぞれが異なる関心事項を持っているため、マルチの場でコンセンサスを形成するのが困難になっている。G7等の機会を使うべきである。
地政学的な緊張が高まるなか、価値観を共有する日本との協力を拡大できる余地は大きい。例えば、5月にカナダ・オタワで開催されるG7ビジネスサミット(B7サミット)の機会を活用し、G7に向けたビジネス界の意見をワンボイスで届けるべく連携したい。
【国際経済本部】