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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2025年5月15日 No.3682 アカデミアにおける次期科学技術・イノベーション基本計画への要望と期待 -イノベーション委員会

益氏

経団連は3月28日、東京・大手町の経団連会館でイノベーション委員会(安川健司委員長、稲垣精二委員長、田中孝司委員長)を開催した。産業技術総合研究所の益一哉 量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センター長(東京科学大学〈Science Tokyo〉名誉教授)から、アカデミアにおける次期基本計画への要望と経済界への期待等について、説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ 産業界から見た高専の評価

5年間の一貫教育を基本とする高等専門学校(高専)の卒業生は、近年、企業から、理論と実践を兼ね備えた即戦力の人財として高い評価を得ている。高専生は、多くの高校生が偏差値重視の受験勉強をしている間、学業のみならず、おのおのの興味・関心に基づき、AI・ロボット等の最先端分野の各種競技会に参加するなど、個性や創造力を発揮している。

他方、高校生一般に関しては、現在の画一的な入試制度が、生徒の潜在的な能力の発現を阻害しているのではないかと危惧する。

■ 教育・人財力の強化

本格的な人口減少下において、日本が競争力を確保していくためには、国際流動性、国際頭脳循環の推進によるイノベーション創出を図っていくことが重要である。そのためには、高等教育(特に大学院レベル)における留学推進と、海外からの留学生の受け入れは必須である。

また、研究力確保のために学生総数を維持すべきことを考慮すれば、大学院レベルだけでなく学士課程レベルからの留学生の受け入れが必要である。そのための体制の強化、学内での使用言語、国内就職先の確保のほか、入試時期、授業料のあり方も重要となる。

人財育成は未来への投資である。産業界と社会、大学が共に人財を育成するよう、本気で取り組んでもらいたい。

■ 博士人財の育成

諸外国に比べ、日本の博士人財は増加していない。大学側の課題としては、アカデミアに向く教育を重視している面があるが、半導体分野をはじめとする工学分野では産業界に入る人も多い。そこで博士プログラムでは、産業界への輩出も目標としている。

産業界には、いわゆる自前主義のOJTからの脱却と、博士号取得者への魅力的な給与の提示をお願いしたい。加えて、大学発のスタートアップに関して、大企業は自社の保有する生産能力を提供し、スケールアップを可能とする連携を積極的に進めてほしい。

■ 産業競争力と産学連携

半導体で世界と戦うためには、研究開発と製造(GDP増への貢献)の両輪が必要である。2030年に向け、それらの存在感を高めるため、最先端の研究開発拠点は欠かせない。国が24年から30年までの7年間で、半導体・AI分野に10兆円規模の公的支援を行う点は高く評価している。その際、モノは価値を産む源泉ではあるが、モノそのものが価値ではないため、ハードウエア偏重にならないよう、半導体からシステム製品、サービスに至るまでのエコシステムを形成し、市場獲得で得た利益を研究開発投資に循環させるモデルを実現していくべきである。

昨今、重要性を増している経済安全保障への対応は、大学単独では困難であり、入国管理からの対応が必要である。他方、大学は、「Academic freedom(国籍、信条等にかかわらず同じ情報にアクセスし、同じ立場で議論し、同じ環境で研究ができる自由)」を確保することが重要である。ただし、デュアルユースが可能な研究等、制限を受ける場合への対応として、キャンパスを分ける(オフキャンパス)といった方法があり得るだろう。

【産業技術本部】

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