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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2025年5月15日 No.3682 2050年を見据えた将来の防災のあるべき姿 -危機管理・社会基盤強化委員会首都直下地震等対策推進タスクフォース

廣井氏

経団連は4月3日、東京・大手町の経団連会館で危機管理・社会基盤強化委員会首都直下地震等対策推進タスクフォース(光田毅座長)の第5回会合を開催した。2050年を見据えた将来の防災のあるべき姿について、東京大学先端科学技術研究センターの廣井悠教授から説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ 50年の社会像

50年に起こり得る社会の特徴のうち、防災に関連するものは次の5点である。

第一に、急激な少子高齢化と地域社会の担い手の変容で、自助が限界に達し、共助も機能不全に陥るだろう。

第二に、生産年齢人口の低下から自治体財政が逼迫し、「安全」に割ける予算が削られる。公助が停滞し、インフラの老朽化も進むだろう。

第三に、経済成長が低下し、新規着工住宅戸数が減る。このため、これまでのように新規着工を機に防災性能の高い住宅に更新されることはなくなるだろう。

第四に、画一的な災害対応が限界を迎え、多様なニーズが出てくるだろう。とはいえ対応可能性を考えると、需要を整理する必要が出てくる。

第五に、終戦直後にあった中規模災害は抑えられても、小規模災害と大規模災害は抑えられないという災害リスクの二極化が進むだろう。

■ これからの防災の方向性

日本の国力があるうちに、災害への予防力を高めておく必要がある。そのために、最先端の情報技術の活用が欠かせない。例えば、機械学習を用いて過去の報道記事を解析し、災害の因果関係をデータベース化すれば、今後の災害で起こり得るリスクを事前もしくは即時に予測し、その対策を講じる、つまり災害を制御することができるだろう。実際、24年の能登半島地震の記事を分析すると、降雪と道路寸断が、その後の復旧・復興の遅れの原因になったことが読み取れる。

また、災害シミュレーションの活用も考えられる。例えば、首都直下地震直後に人々が一斉帰宅してしまうと、東日本大震災の時とは異なり、歩道が過密になって危険な状態になる可能性が予測される。同時に、約半分の人が会社にとどまることで密度が低下し、転倒事故のリスクを下げることが可能とも予測される。このように、先端技術をうまく活用して未経験の現象や未来をイメージしながら、対策を打つことが求められる。

プロスペクト理論によると、人間は損が出ないシナリオに賭けたがることが分かっている。そして一般に、防災への投資は面倒なものと感じがちである。そのため防災を推進するうえではブランド向上など他の価値と組み合わせることが肝要である。

千葉・津田沼地域では、新しい大規模マンションができた際に、住民の助け合いの一環として防災訓練を行ったところ、これが地域コミュニティづくりに役立ち、地域での祭りの開催などにもつながったという。防災を呼び水に、企業活動や地域活動を活性化させることができるのではないか。

大企業には、首都直下地震が発生した場合でも組織の本社機能を維持して意思決定をきちんと行い、社会経済活動を維持するよう期待している。国際社会での競争力を失わないよう、災害が起きても電気や水、インターネットなどの機能が維持される拠点を複数企業間で協力して設けておくのも一案である。

【ソーシャル・コミュニケーション本部】

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