
森氏
経団連の開発協力推進委員会(安永竜夫委員長、森田隆之委員長)は4月7日、東京・大手町の経団連会館で森昌文内閣総理大臣補佐官から、「インフラシステム海外展開戦略2030」について、説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。
■ インフラ市場の構造的変化と戦略2030の方向性
現在、世界のインフラ市場は、ハードだけでなくサービスやソフト面の付加価値を求める顧客ニーズの複雑化、新興国企業の成長、グローバルサウスの台頭などにより、構造的変化のなかにある。こうした状況を踏まえ、「経協インフラ戦略会議」において、2024年12月に「インフラシステム海外展開戦略2030」を決定した。
その際に石破茂内閣総理大臣は、同戦略に基づき、30年のインフラシステムの受注額45兆円を目指し、官房長官を司令塔として政府一丸となり、強力に取り組みを推進すると述べた。加えて、わが国が相手国からしっかりと選ばれ、海外で稼ぐためには、トップセールスが特に重要であり、関係閣僚を含めて積極的に取り組んでいくと強調した。
■ 具体的施策
まず、わが国の稼ぐ力を高めるため、相手国のニーズを踏まえた「懐に入る」対応が必要である。そのために、日本の強みを生かした協力メニューを初期段階から提案する「オファー型協力」を推進する。同時に、官民連携(Public Private Partnership=PPP)事業に対する相手国政府の出資等について、わが国政府が公的資金を活用して採算性を確保するなど、案件を形成するために積極的に参画を支援し、そのための提案力を強化していく。また、日本企業と現地企業のネットワーキングの拡充に向け、在外公館を中心とした取り組みなどを進めていく。
次に、経済安全保障上重要なインフラ等への積極的関与として、国際協力銀行(JBIC)法改正(注)による出融資保証の強化や、公的資金や民間資金の組み合わせによる支援などを行う。
最後に、グリーントランスフォーメーション(GX)、気候変動、環境関連の取り組みとして、アジアゼロエミッション共同体(AZEC)を通じ、多様な道筋からカーボンニュートラル(CN)を実現するため、脱炭素ロードマップの策定支援や二国間クレジット制度(JCM)の活用による質の高い炭素市場の構築を図る。また、防災分野、5G/オープンRANや海底ケーブルなどデジタル分野、健康医療等分野の取り組みなどを進めていく。同時に、新たな市場への展開に当たってルールメーキングの主導は大きな意義があることから、AI、バイオなどの分野における取り組みを強化していく。さらに、二国間・多国間の枠組みにおいて、新たな市場に対応する人材育成等にも取り組む。
(注)資源・エネルギー、食料等のサプライチェーン強化に向けて、日本企業のサプライチェーンや海外事業に必要な基盤を支える外国企業を事業開発等金融の対象とする
【国際協力本部】