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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2025年5月22日 No.3683 公益通報者保護法の改正法案に関する説明会を開催 -消費者庁と意見交換/経済法規委員会企画部会

経団連は4月7日、経済法規委員会企画部会(大内政太部会長)をオンラインで開催した。消費者庁の安達ゆり企画官から、公益通報者保護法の改正法案について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

消費者庁は、2024年5月から有識者会議「公益通報者保護制度検討会」を開催し、同制度の見直しについて検討を行い、同年12月に報告書を公表した。同報告書を基に、25年3月4日に公益通報者保護法の改正法案が閣議決定された。改正法案では、近年の事業者の公益通報への対応状況や、公益通報者の保護を巡る国内外の動向に鑑み、次の4点について措置が講じられている。

第一に、公益通報の体制整備の徹底と実効性の向上を図る。常時使用する労働者が300人を超える事業者に対し、公益通報対応に関する「従事者指定義務」の違反に対し、現行法における消費者庁の指導・助言、勧告権限に加え、勧告に従わない場合には命令が可能となる。命令に違反した場合には30万円以下の罰金が科される(法人と個人の両方を対象とする両罰規定)。

また、消費者庁の立入検査権限を新設するとともに、報告懈怠・虚偽報告、検査拒否に対しても、30万円以下の罰金(両罰規定)が科される。

加えて、体制整備義務の例示として、事業者は労働者や派遣労働者に対して公益通報体制を周知する義務があることが明示される。なお、周知義務は刑事罰の対象ではない。

第二に、公益通報者の範囲が拡大される。事業者と業務委託関係にあるフリーランスや、業務委託関係が終了して1年以内のフリーランスを保護対象に追加し、公益通報を理由とする契約解除などの不利益な取り扱いが禁止される。

第三に、公益通報を阻害する要因に対処する。事業者が正当な理由なく公益通報をしない合意を求める妨害行為を禁止し、これに違反する合意などを無効とする。加えて、正当な理由がない限り、公益通報者の特定を目的とする行為が禁止される。

第四に、公益通報を理由とする不利益な取り扱いを抑止・救済する。公益通報後1年以内の解雇または懲戒は、公益通報を理由としたものと推定される。また、公益通報を理由として解雇または懲戒をした者に対し、6カ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金(両罰)を科す直罰規定を新設し、法人には3000万円以下の罰金が科される。また、国家公務員等に対する不利益な取り扱いを禁止し、違反して分限免職や懲戒処分をした者には、同様の直罰規定が適用される。

改正法案の附則では、改正法は、公布の日から1年6カ月以内の政令で定める日に施行され、施行後5年(注)をめどに新法の施行の状況を勘案し、新法の規定について検討を加え、必要があると認めるときは見直しを行うことが定められている。

消費者庁は、現在の通常国会での改正法案の成立を目指しており、成立後は早期に法定指針の見直しに着手する。経済界の意見も聞いたうえで、パブリックコメントを実施する予定である。周知義務や不利益取り扱いに関する具体的な内容の例示などの見直しを行うが、大幅な改定は行わない方針である。

(注)提出時法律案では施行後「5年」であったが、4月24日の衆議院消費者問題に関する特別委員会で「3年」に改める内容に修正のうえで可決され、5月22日現在参議院で審議中

【経済基盤本部】

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