
河田氏
経団連は4月10日、東京・大手町の経団連会館で観光委員会企画部会(種家純部会長)を開催した。観光庁の河田敦弥観光戦略課長から、観光政策の動向などについて、説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。
■ インバウンド・国内旅行の状況
訪日外国人旅行者は2024年に約3687万人となり、19年(3188万人)を超えて過去最高となった。国・地域別では韓国(881万8000人)、中国(698万1000人)、台湾(604万4000人)など、東アジアが全体の約67%を占めている。19年比では、韓国(58%増)や台湾(24%増)、米国(58%増)やオーストラリア(48%増)の伸び率が顕著である。一方、宿泊は依然として都市部に集中しており、地方部への宿泊客誘致が課題となっている。
24年の訪日外国人消費額も、滞在期間の長い欧米やオーストラリアからの旅行客の増加などによって8兆1000億円(19年比69%増)、1人当たりの旅行支出は22万7000円(同43%増)と大きく伸びている。観光の消費額は自動車の輸出額(17兆9000億円)に次ぐ第2位の規模であり、わが国経済に大きなインパクトをもたらしている。
24年の日本人の国内旅行を見ると、延べ旅行者数は5億4000万人(前年比108%)であり、コロナ前(19年、5億9000万人)の水準には届かなかったが、消費額は25兆1000億円(前年比115%)と、過去最高を記録した。
■ 観光政策の方向性
海外の大手旅行雑誌「コンデナスト・トラベラー」(米国・英国版)の「世界で最も魅力的な国読者投票ランキング」では、日本が2年連続で1位に選出されている。日本を訪れ、観光コンテンツに感銘を受けた旅行者は、訪日を繰り返し、日本でしかできない高品質な体験を追求する傾向にある。こうした旅行先としての高い評価を追い風に、わが国の観光の質の向上と地方展開の深化を推進する必要がある。
観光政策の基本指針として、政府は23年に、25年度までの3年間を計画期間とする「第4次観光立国推進基本計画」を定めた。この計画では、「持続可能な観光」「消費額拡大」「地方誘客促進」の三つのキーワードに特に留意したうえで、(1)持続可能な観光地域づくり戦略(2)インバウンド回復戦略(3)国内交流拡大戦略──を総合的かつ強力に推進し、コロナ前より進んだ形で観光を振興するとしている。
今後は、第26回観光立国推進閣僚会議(25年3月18日)における石破茂内閣総理大臣からの指示に基づき、オーバーツーリズムの未然防止・抑制をはじめとする持続可能な観光と地方誘客をより一層推進するとともに、第5次となる観光立国推進基本計画を25年度末までに策定する。
観光庁は、同計画の策定とともに、16年に政府が「明日の日本を支える観光ビジョン」で掲げた、30年の訪日外国人旅行者数6000万人と訪日外国人旅行消費額15兆円という目標の達成に向け、引き続き取り組みを進めていく。経済界にも理解と協力をお願いしたい。
【産業政策本部】