経団連は4月23日、博士人材の民間企業における活躍促進に向けた説明会をオンラインで開催した。経済産業省の今村亘大臣官房審議官、川上悟史イノベーション・環境局大学連携推進室長、文部科学省科学技術・学術政策局の先﨑卓歩科学技術・学術総括官、高見暁子人材政策推進室長から、2025年3月にまとめた、「博士人材の民間企業における活躍促進に向けたガイドブック」と「企業で活躍する博士人材ロールモデル事例集」について、それぞれ説明を聴くとともに懇談した。説明の概要は次のとおり。
■ 博士人材が企業で活躍する必要性(今村氏)

経産省と文科省は24年8月、「博士人材の民間企業における活躍促進に向けた検討会」を共同で立ち上げ、検討を進めた。
昨今、ビジネスを展開するうえで、企業も最先端の科学的知見が求められるようになっている。このため、大学等と連携し、科学技術について会話できる博士人材の企業での活躍の必要性が高まっている。現状でも博士課程修了者のうち一定数は企業へ就職している。しかし、マッチングがうまくいかないことなどを理由に、採用意欲はあるものの博士人材を採用できていない企業が全体の35%を占める。博士人材の企業での活躍を促進するうえで、企業と博士人材のマッチングが重要である。
■ 博士人材の民間企業における活躍促進に向けたガイドブック(川上氏)

企業の人事担当者や経営者、大学教職員、博士課程学生が相互理解のもとで、博士人材の育成・活躍促進に向けた取り組みを進めるための手引として、ガイドブックを策定した。ガイドブックの策定に当たり、経団連にも検討会に参画してもらった。産学双方の意見を反映し、取りまとめている。
企業はガイドブックを参考に、(1)博士課程学生の実態把握のための、大学等が主催する博士課程学生とのマッチングイベントへの参加(2)経営方針と人材戦略の連動による博士人材の採用の検討(3)研究に支障が生じないスケジュールを含む採用計画の決定(4)博士課程学生への効果的な情報発信(5)博士課程学生向けインターンシップ等の実施(6)専門性に加えて汎用的能力にも着目した選考時の評価(7)博士人材の強みを引き出すための環境整備(多様なキャリアパスの設定、ジョブ型人事制度の導入等)(8)産学連携による人材育成・交流の推進――を行ってほしい。
■ 企業で活躍する博士人材ロールモデル事例集(高見氏)

経団連等の協力のもと、全20社25人の博士人材ロールモデルにインタビューを実施し、事例集をとりまとめた。事例集では、博士人材の活躍を(1)専門的知見を生かして新規事業開発や収益向上等につながる活躍をしている例(2)課題発見・解決能力などの汎用的な能力を生かして研究開発以外の業務で活躍している例(3)入社後に、専門とは異なる分野で専門性を身に付けて活躍している例(4)博士課程における国際的な経験を生かしてグローバルに活躍している例(5)人文社会の専門知識を身に付けて活躍している例――の5分類に整理している。
■ 企業へのメッセージ(先﨑氏)

博士人材はアカデミアのみならず企業等でも幅広く活躍していかなければならない。そのため、ガイドブックに経済界の意見をできる限り反映した。政府としては、25年夏にシンポジウムを開催するなど、大学にも幅広く周知していく予定である。博士人材の採用に関する相談のリクエストがあれば、経産省・文科省が個社に出向いて話を伺う。
◇◇◇
相談や意見交換などの問い合わせは、文科省高等教育局大学振興課(eメール=daigakuin@mext.go.jp)、文科省科学技術・学術政策局人材政策課人材政策推進室(eメール=kiban@mext.go.jp)、経産省イノベーション・環境局大学連携推進室(eメール=bzl-daigaku-jinzai@meti.go.jp)まで。
【教育・自然保護本部】