
イスマイーロフ氏(左)と國分委員長
経団連は5月20日、東京・大手町の経団連会館で、ウズベキスタンのヌリッディン・ムイディンホノヴィッチ・イスマイーロフ最高議会下院議長と懇談した。日本NIS経済委員会の國分文也委員長(当時)らが出席し、ウズベキスタンの改革の状況や日本企業への期待などについて説明を聴くとともに意見交換した。イスマイーロフ氏の説明の概要は次のとおり。
■ 政府の改革
シャフカット・ミルジヨーエフ大統領就任以降、外交政策の中心的課題は中央アジアの近隣諸国との関係改善だった。近年、関係改善に向けた取り組みが功を奏し、近隣諸国との互恵的・友好的関係を築けている。また、「中央アジア+1」の枠組みで、中国、米国、日本とも対話・協力が進んでいる。
ウズベキスタン議会は、政府の活動をモニタリングしており、政府に対して議会で国家プログラムの進捗を年2回説明させることで、一定のコントロールを利かせている。
また、司法の独立を目指し、最高裁判所を筆頭に刑事事件、民事事件、経済事件を分けて裁く制度を設けることで、第三者が司法に干渉できないシステムにしている。
■ ビジネス分野の改革
投資に関する改革としては、ビジネスオンブズマン制度を設計し、海外投資家を含む企業家の権利・利益を擁護できるようにした。また、今まで政府の投資に関する担当は、複数の省にまたがる縦割り構造となっていたが、新設された投資貿易省に担当を一本化して効率化を図った。一連の改革によって、国際金融機関の信頼性が向上し、ウズベキスタンへの投資に際して、従来よりも審査期間が短縮されている。
■ 有望な協力分野
日本企業との協業が期待できる分野は、鉱物資源の採掘や貿易、グリーン経済、AI・ICTなど数多くある。ウズベキスタンには数多くの鉱山があり、日本の鉱業は豊かな採掘実績があるため、採掘事業の協業が可能である。特に天然ガスの開発に注目してほしい。
ウズベキスタンから輸出するためには、カザフスタンやロシアなどの北方の国々を経由する必要がある。現在、中国やキルギスとつながる鉄道網が建設中であり、これが新設されれば輸出ルートが増え、貿易の活性化につながる見込みである。
ウズベキスタンにとってグリーン経済は最優先課題の一つである。2030年までに、電力の54%を再生可能エネルギーで確保することを目標としている。主にアラブ諸国からの投資があるが、目標達成に必要な水準には達していないため、グリーン投資にも注目してほしい。
AIやICTの分野にも力を入れており、ICTは若者の雇用促進のために企業を誘致している。他に農業・観光・交通・物流などさまざまな分野で日本企業との友好的な協力の可能性がある。ビジネスに関する提案は、ぜひ駐日ウズベキスタン大使館に寄せてもらいたい。
【国際経済本部】