
桑原氏

池谷氏
経団連は5月15日、東京・大手町の経団連会館で、経済産業省が4月30日に公表した「共創パートナーシップ 調達・購買ガイドライン」(注)に関する説明会を開催した。経団連では、2025年1月、大企業がスタートアップの製品やサービスを活用して自社の課題を解決する手法である「ベンチャークライアントモデル」(VCM)に関する勉強会を開催している。
経産省は、事業会社とディープテック・スタートアップとの共創を後押しするため、新たな協業手法として、事業会社によるスタートアップの製品やサービスの調達・購買の戦略的活用に関する調査研究を進め、同ガイドラインを取りまとめ公表した。説明会では、経産省イノベーション・環境局の桑原智隆イノベーション創出新事業推進課長ならびに池谷光博同課専門職、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の羽田昇平スタートアップ支援部長らから説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。
■ 検討の背景
政府は22年11月、「スタートアップ育成5か年計画」を発表した。約2年半が経過し、折り返し地点に差し掛かっている。スタートアップの数は増加し、裾野は一定程度拡大してきた。今後は企業価値や事業規模の大きなスタートアップの成長事例を増やし、継続的にイノベーションを創出していくことに重点を置く必要がある。そのうえで、5か年計画後半の重要課題の一つに「ディープテックの成長」を掲げている。その実現には、スタートアップからの調達の促進ならびにそのための需要創出が欠かせない。
しかし、スタートアップからの調達を通じた共創では、概念実証(PoC)までは進むものの需要創出までは円滑に進まないケースが見受けられる。そこで国内外の先進事例を調査し、事業会社とスタートアップの双方にメリットが生まれやすい調達のあり方を定義し、調達を促していくべく、同ガイドラインとモデル契約書を取りまとめ公表した。今後は、事業会社の課題を解決するスタートアップとの連携や関係構築、初期の調達を支援する事業も展開する予定である。
■ ガイドラインの要点
スタートアップからの調達を通じた共創において頻出する課題としては、事業会社のコミットメント不足、プロジェクトマネジメントの難しさ、協業コストの大きさ――の3点が挙げられる。これらの課題の根底には、社内体制の未整備という構造的な問題もある。同ガイドラインは、これらの課題に対する対応ポイント(1)戦略的利益の創出につながる事業課題の特定(2)双方が将来的な目線・目標を合わせるためのマイルストーンの協議・設定(3)実現性の検証に必要な量のスタートアップの製品やサービスの「初期購買・検証」を迅速かつ円滑に実施――を盛り込んだ望ましい協業プロセスや社内体制を整理している。
あわせて「初期購買・検証」において具体的・実務的な活用を促進するためのひな型として、初期購買趣意書や初期購買モデル契約書も提示している。
同ガイドラインには、協業において想定される論点への対応のポイントが整理されているほか、個社の取り組み事例や社内体制も紹介されている。スタートアップからの調達を通じて共創に取り組む際、ぜひ参考にしてもらいたい。
(注)詳細は経産省ウェブサイト・ニュースリリースを参照
https://www.meti.go.jp/press/2025/04/20250430003/20250430003.html
【産業技術本部】