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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2025年6月26日 No.3688 意見書「インパクト評価・投融資に係るデータ・指標等についての考え方」を公表

経団連は5月29日、意見書「インパクト評価・投融資に係るデータ・指標等についての考え方」を公表した。

自社のパーパス(存在意義)を起点として、社会課題を解決しつつ、中長期的に企業価値を向上する事業活動を展開するための有力な手段であるインパクト投融資について、同意見書では、目指すべき姿を提示し、共通課題、政府への提言、産業界の取り組みを整理した。概要は次のとおり。

■ 目指すべき姿

企業がパーパスを起点に事業とその社会的インパクトを一貫したストーリーをもって提示し、それを適切な指標で評価する。こうした評価を用いて、(1)経営者や従業員が、自社の企業活動がどのように社会課題の解決に貢献し、同時に企業価値を向上させているかを確認する。同時に、(2)金融機関や投資家が、その評価を踏まえて投融資を行い、(3)結果として企業価値と社会価値の双方が持続的に向上する好循環を実現する。

■ 主な課題

第一に、社会課題の解決の価値評価は発展途上である。企業のインパクト投融資に対するアプローチは、「事業の直接的な価値に加えて企業活動が生む潜在的な価値も可視化すること」「社会的インパクトの創出そのものを事業計画に落とし込むこと」の2点に集約される。しかし、特に後者においては、企業が解決する社会課題の価値から逆算して企業が生み出す社会的価値を定量・定性評価する枠組みは発展途上である。

第二に、インパクト指標を整理し、必要なデータを整備する必要がある。日本において重要性の高い社会課題(人手不足、少子高齢化、自然災害等)に応じたデータや指標の整備、国際指標との整合が課題である。

第三に、社内の合意形成が不足している。経営層から現場までインパクト評価の意義・目的の共有・理解のプロセスが必要である。

第四に、対話相手となる投資家の関心に応じた情報開示が求められている。どのような投資家と関係を築きたいのかを戦略的に整理したうえで、それぞれに応じたインパクト情報を開示していくことも重要である。

■ 政府への提言

一つ目は、日本の課題に応じた指標の設定である。日本として解決すべき優先課題・分野におけるインパクト指標を国家像や政策目標から逆算し、設定すべきである。指標を設定する際は、政府内での施策の一貫性を確保すること、企業が創意工夫できる「自由演技」の余地を残すこと、設定した指標が国際的にも認められるようにすることが重要である。

二つ目は、データの整備。政府保有データの可視化・オープン化とともに、新規データの算出や、データ活用の利便性向上のためのガイドラインの作成等は重要である。

三つ目は、政府によるメッセージの発信である。インパクト投融資を官民連携で進めることを継続的に発信するとともに、企業のベストプラクティスの収集や表彰等を通じて政策的に後押しすることも期待する。

■ 産業界の取り組み

産業界としては、(1)指標の設計やデータ収集の前に、価値創造ストーリーに関する社内での合意形成(2)中長期での事例の積み上げ等、中長期的視点によるインパクト評価の推進(3)投資家との対話を通じ、必要とされるインパクト指標を特定するなど、インパクト評価・情報開示の戦略的活用(4)ベストプラクティスの収集と課題の共有――に取り組む。

【ソーシャル・コミュニケーション本部】

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