
ストゥッブ大統領(左)と髙島副会長
経団連の髙島誠副会長・ヨーロッパ地域委員長、齋藤洋二同企画部会長は6月10日、東京・大手町の経団連会館で、フィンランドのアレクサンデル・ストゥッブ大統領、ヴィッレ・タヴィオ外国貿易・開発大臣、同国企業代表団一行と懇談した。フィンランド側の発言の概要は次のとおり。
世界は三つの大きな潮流に直面している。
一つ目は、地政学・地経学の重要性が高まっていることである。現在の世界情勢は過去とは異なるものであり、今後5~10年は混乱が続く。私たちは、予測不可能で見通しを立てづらい世界で生きていくことになる。フィンランドのような小国は、対外貿易に大きく依存しているため、多国間の枠組みが機能してほしいと考えている。他方、力の空白が生じることは、新たなアライアンスの機会ともなる。
二つ目は、政府の役割が増していることである。冷戦後、「国家はビジネスに介入すべきでない、市場を重視すべき」といわれていた。しかし今は、あらゆる場面で政府の役割が必要になっている。自由貿易を行うためでさえ、政府がドアを開け、契約・協定・覚書等を締結することが必要となっている。
防衛産業や人工衛星等のように、国家の影響を受けやすい分野も多くある。自律的・分散型の経済の効力は信じているものの、コロナ禍を経て、それが必ずしも全能ではないことを目の当たりにした。
三つ目は、第4次産業革命である。AI・ロボティクス・量子等の技術革新はあらゆる産業に波及し、経済や働き方に限らず、政治や戦争のあり方までをも変え得る。
このような不確実性が高い世界で、日本とフィンランドの協力はますます求められている。両国は価値観を共有する戦略的パートナーであり、ビジネス面の協力や貿易の促進が重要である。経済安全保障と供給ルートの強化についても、二国間で協力したい。
【国際経済本部】