
ナウセーダ大統領(左)と東原委員長
経団連の東原敏昭審議員会副議長・ヨーロッパ地域委員長、齋藤洋二同企画部会長は6月9日、都内で開催された日リトアニアビジネスフォーラムに併せ、リトアニアのギターナス・ナウセーダ大統領一行と懇談した。ナウセーダ大統領およびリトアニア政府一行の発言の概要は次のとおり。
コロナ禍でEUの多くの国々が経済的な困難に直面したが、リトアニア経済は大きな打撃を受けずに済んだ。これは、バイオテクノロジー、レーザー、サイバーセキュリティ、ICT、フィンテック、宇宙などの分野が急速に成長したことで、経済が高度化し、多様化したためである。輸出先も多様化したため、わが国の経済はリスクに強い。
われわれは経済特区を設け、投資を誘致している。安定した政治、良好な経済、税制、成功しようとする意志がリトアニアの強みである。
日本が三海域イニシアティブ(注)の戦略的パートナーになったことは大変重要である。10年前に始まった鉄道プロジェクト「レール・バルティカ」は、今では安全保障面でも重要になっている。EUから資金が提供されるものの、多くの資金が必要で、EU内外の民間資金を動員したいと考えており、日本企業の協力を求めたい。
エネルギートランジションに向けて、わが国でも水素プロジェクトを計画している。日本では市街地でも水素を製造していることに驚いた。水素、メタノール、アンモニア製造の先駆者である日本企業からぜひ知見を得たい。
EUが進める化石燃料の廃止には一定の過渡期が必要であり、一夜にして化石燃料をなくすことは不可能である。再生可能エネルギーのみに依存することもできない。
バルト3国は2025年2月、ロシア電力網との接続を遮断し、ロシアからのエネルギー自立を果たした。しかしその数週間後には、日が照らず風が吹かない日が続き、電力価格が高騰してしまった。
リトアニアには10年まで原子力発電所があったこともあり、将来は小型原子炉(SMR)の可能性についても議論したい。
19年に経団連ミッションがリトアニアを訪問してから5年半がたち、状況は大きく変わった。ぜひまたリトアニアを訪問し、ここ数年の大きな進歩を見てほしい。
(注)中・東欧・バルト地域の連結性強化と格差縮小を目的として15年に発足したバルト海・黒海・アドリア海地域の13カ国の経済協力枠組み。ポーランド、中・東欧、EU、米国、日本、ウクライナが参加
【国際経済本部】