
経団連の日本メキシコ経済委員会(倉石誠司委員長、芝田浩二委員長)は5月30日、東京・大手町の経団連会館で、第34回日本メキシコ経済協議会の事前勉強会を開催した。
6月11日開催の第34回日本メキシコ経済協議会に先立ち、外務省の野口泰中南米局長からメキシコの政治情勢について、経済産業省の依田學大臣官房審議官からメキシコの経済情勢について、それぞれ説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。
■ 野口氏
米国による関税措置の影響を受け、クラウディア・シェインバウム大統領は、トランプ米国大統領就任後、計5回の電話会談を実施した。経済大臣および通商担当次官は、ほぼ毎週交互にワシントンを訪問するなど、関税交渉に積極的な姿勢を見せている。メキシコは、完成自動車および鉄鋼・アルミニウムに対する関税について、米国と交渉を継続する予定である。
シェインバウム大統領は、高支持率を維持している。メキシコの大統領としては7年ぶりに対面でG20サミットに出席するなど、前政権より外交を重視している。総額2770億ドルの国内投資計画を取りまとめた「メキシコ計画」(Plan México)を発表しており、現下の国際情勢における内外からの投資に注目が集まっている。
対米関係を重視する一方、対中関係は、一帯一路に参加しないなど比較的ローキーである。政府は内政不干渉を外交政策の柱の一つに掲げ、中国国内の人権状況や南シナ海問題、経済的威圧への言及を控える傾向が強い。対日関係は、ハイレベルによる対話が活発で安定傾向にある。
■ 依田氏
中南米地域でブラジルに次ぐ経済規模を有するメキシコは、コロナ禍による経済停滞期を除き、安定した成長率を記録している。
隣接する米国に加え、欧州、中南米、アジアへのアクセスが良く、自由貿易協定締結に意欲的である。米国経済との一体化が進み、米国向けの輸出加工拠点として製造業を中心に発展してきた。
日本からの直接投資は年々増加傾向にある。米中貿易摩擦やコロナ禍などを背景に消費地の近くに供給源を設けるニアショアリングの認識が高まり、メキシコの重要性が再評価されている。
2025年は、日本メキシコ経済連携協定(EPA)発効から20年を迎える。05年の協定発効から、両国間の貿易総額は増加傾向にあり、24年は協定発効前の04年比で約3.5倍に増加した。日本メキシコEPAは一部の自動車や、自動車部品の関税を撤廃する効果がある一方、原産地規則の活用に課題があり、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)の活用の方が進んでいるのが実態である。
25年に、両国の貿易投資促進や、民間企業が直面しているビジネス上の課題に関して議論を行う、日本メキシコEPAビジネス環境整備委員会を開催する予定である。経済界の協力をお願いしたい。
18年に合意した米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)は、域内の関税全廃を含む北米自由貿易協定(NAFTA)の基本的枠組みを維持しつつ、完成車の域内原産比率の段階的引き上げなど、自動車の原産地規則を大きく修正した点が特徴である。6年ごとの協定見直しを定めるレビュー条項に基づき、早ければ25年後半にも見直し協議が開始される見通しであり、その内容に世界中から関心が集まっている。
シェインバウム政権下で、日本とメキシコのデジタルトランスフォーメーション(DX)・グリーントランスフォーメーション(GX)分野を中心とした共創案件の創出も期待される。
【国際協力本部】