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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2025年6月26日 No.3688 自然資本に基づく事業価値創出への挑戦 -経団連自然保護協議会

千葉氏

経団連自然保護協議会(西澤敬二会長)は5月26日、東京・大手町の経団連会館で、自然資本に基づく事業創出に関する懇談会を開催した。東京農工大学の千葉一裕学長から、自然資本に基づく事業価値創出に向けた取り組みの方向性について説明を聴くとともに意見交換した。概要は次のとおり。

■ 食の観点から見る自然資本共生の重要性

自然資本への投資が社会リスクを低減し、事業に連動していくことが重要であり、それを食の観点からひもといていく。

日本は農業生産国から多くの食料を輸入しているだけでなく、飼料、種子、ひよこ、肥料、農薬のほとんどを輸入に依存している。農業に係る科学技術等も輸入しており、先進的科学技術力でも後塵を拝することとなる。食料を輸入に依存し続けると、就農者が減少して森林が荒廃することに加え、自然災害の増加や、新たな感染症のリスクも高まる。農産物を輸入に依存するという、日本にとって当たり前に見える行動の裏側には、日本が弱体化する要因が存在している。

この状況を理解したうえで、国際社会のなかで日本はどこに先進的な手を打つべきかを考える必要がある。

■ 自然資本の共生と食料安全保障の確立に向けた方策

自然資本の共生と食料安全保障の確立に向けて、新たな「食のレジリエンス・システム」を構築すべく、次の五つの観点で、自然資本を活用した事業を推進する必要がある。

第一は、生物の機能を活用した資材を産業化する「脱化石×自然資本再生」を推進すること。第二は、自給型種子や育種基盤を整備し、輸入依存から脱却していくこと。第三は、自給自足を超えて、肥料・餌から残飯・排泄物までを一つの都市の周辺で循環させる「地域栄養エコシステム」という考え方で、都市近郊アグリサプライチェーンを構築すること。第四は、フードテックとネイチャーテックを掛け合わせ、生物の機能を活用した環境調和型農業を世界に広げていくこと。第五は、自然が生み出す価値を定量化・可視化し、企業活動の新しい収益源や価値創出ストーリーを設計していくこと――である。

■ 自然資本に基づく事業価値の創出に向けた大学の新たな役割

自然資本に基づく事業価値の創出には、新たな価値基準に対する根拠の明確化とそのための信頼性のある数値情報が必要であり、大学がさらに力を発揮すべきと考えている。

大学と公的機関が連携し、企業に後押しをしてもらいながら、日本企業の勝ち筋を意識した国際標準化交渉を先導していくことも求められている。そのため、大学と企業が適切な評価法を共有することが必要であるとともに、新たな事業開発に際しては革新技術の活用と科学的検証、国際連携が不可欠である。

日本全体の競争力強化の観点で、国内の大学全体で研究者をオープンに紹介し、事業を進めていく必要がある。

◇◇◇

説明後の意見交換では、参加者から各社の生物多様性保全に関する取り組みが紹介されたほか、大学との連携方法や気候変動等との統合的アプローチの方策など、多数の質問が寄せられた。

【教育・自然保護本部】

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