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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2025年7月10日 No.3690 構造的課題を抱える中国経済 -中国委員会企画部会

経団連は6月19日、東京・大手町の経団連会館で、中国委員会企画部会(鈴木健史部会長)を開催した。ロジウム・グループのダン・ローゼン共同創業者、ローガン・ライト パートナーから、中国経済の現状について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

左からローゼン氏、ライト氏

■ 中国経済の不均衡と内需不振

中国経済は構造的な課題に直面しており、これまでの投資主導型成長モデルが限界を迎えつつある。第1次習近平政権下で試みられた財政、資本市場、企業ガバナンス等の制度改革は、政情の不安定化を背景に頓挫し、この結果生じた金融システムのゆがみが、現在の不均衡な経済システムにつながっている。

内需が伸び悩むなかで、国営企業による利益度外視の生産体制が、過剰生産、さらには輸出依存につながり、米国をはじめとする主要国との貿易摩擦が一層深刻化している。

中国で内需拡大が進まない要因として、GDPに対する家計所得比率の低下、所得格差の拡大、家計債務の増大、消費より貯蓄に資金が向かう傾向が挙げられる。

財政も脆弱であり、税収の大部分を法人税等に依存している一方で、個人所得税や消費税の割合は依然として低い水準にとどまっている。

加えて、不動産不況によって地方政府の税収が減少し、国家債務がGDP比9%に達している。中国政府は国内銀行に国債の引き受けを促して資金調達を進めているが、その結果、銀行資産の5分の1が政府債権に偏るなど、銀行の融資・投資機能の低下が懸念される。

■ グローバル経済への波及と今後の対応

世界経済に占める中国の名目GDPの割合が低下傾向にあるなか、中国政府はAIや半導体などの先端産業を成長分野として掲げている。しかし、内需が限定的ななかで、グローバル輸出市場が開かれていなければ中国製品の受け入れ先を確保することは困難である。

不動産に代わる経済成長の牽引材料がないなかで、政府は金利引き下げ、補助金の給付、国債の買い入れなど、複数の政策を実施して内需拡大を試みているが、持続的な需要創出には至っていない。

中国は、米国以外の国々への輸出拡大を進めているものの、第三国を経由した迂回輸出が米国等による高関税措置を誘発するなど、新たな貿易摩擦の火種にもなっている。

こうした状況が抜本的に改善されない限り、中国に活発な経済成長を期待するのは現実的ではない。各国政府および企業は、中国経済の構造的脆弱性を認識したうえで、冷静かつ戦略的な立ち位置を模索する必要がある。

【国際協力本部】

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