
貴田氏
経団連は6月19日、東京・大手町の経団連会館でバイオエコノミー委員会企画部会(大内香部会長)を開催した。経済産業省商務・サービスグループ生物化学産業課の貴田うらら課長補佐から、バイオものづくり政策の展開について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。
■ 経産省におけるバイオものづくり政策の取り組み状況
2024年6月に策定された「バイオエコノミー戦略」では、バイオものづくりが主要な柱の一つとされた。産業のバイオプロセス転換やサプライチェーン強化を目指すなかで、環境価値の訴求という本分野特有の論点に加え、人材確保やスタートアップによる技術革新の促進など日本全体に係る論点もある。経産省は、これらの課題に横断的かつ総合的に対応していく方針である。
当省では、CO2を原料とするバイオものづくりを支援する「グリーンイノベーション基金」(GI基金)と、食品残渣や未利用資源を用いた社会実装を推進する「バイオものづくり革命推進基金」の二つの基金事業を設置した。とりわけGI基金では、先行して、CO2吸収量の評価手法、ガス発酵の安全基準、ライフサイクルアセスメント(LCA)評価手法といった共通課題を抽出し、協調領域として企業間連携を促している。
バイオインダストリー協会(JBA)の「バイオものづくりフォーラム」では、研究開発と社会実装の2軸に焦点を当てた議論が進行している。産業振興に向けては、原料や技術開発に加え、製品化・市場化に関わる下流の事業者との連携も重要であり、当省はその橋渡し役も担っていきたい。
■ GX政策における需要促進策と標準化の推進
当省は24年12月、グリーントランスフォーメーション(GX)市場の形成を後押しする「GX率先実行宣言」を創設した。GXに資する製品を自主的に導入・活用する企業の取り組みを評価し、補助金等の優遇措置を通じて、GX製品の供給側のみならず需要側の機運を高め、市場確立を促す。GI基金の支援対象であるバイオものづくり製品もGX製品に含まれ、同宣言による普及拡大が期待される。
内閣府知的財産戦略本部は25年6月、「新たな国際標準戦略」を策定した。バイオエコノミーを重要領域かつ戦略領域に位置付けている。当省も同月、「新たな基準認証政策の展開~日本型標準加速化モデル2025」を公表し、国主導の戦略的標準化を進めるべきパイロット分野の一つとしてバイオものづくり分野を位置付けた。
世界各国でバイオエコノミーに関する投資やルール形成が加速していることを踏まえ、それに後れを取らないよう、企業のニーズに応じた支援を行い、施策を講じながら標準化を着実に推進していく。
■ 経済安全保障とバイオセキュリティへの対応強化
経済安全保障の観点からサプライチェーンの重要性が増すなか、当省では24年にバイオものづくりに関わる重要物資や技術のリスク調査を実施した。この結果を踏まえ、今後はリスクの大きさを勘案しながら、サプライチェーンのあり方や必要な施策を検討していく。
バイオ技術の高度化に伴い、バイオセキュリティの確保は国際的な議論の場でも頻繁に取り上げられ、関心の高まりがみられる。米英政府はガイダンスを作成し、合成DNA配列そのものや合成発注者に対するスクリーニングを求めている。わが国としても、こうした国際動向を踏まえ、取るべき対応の方向性を見極めていく必要がある。
【産業技術本部】