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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2025年7月24日 No.3692 OECD諮問委員会2025年度総会を開催 -OECD諮問委員会

武内氏

経団連のOECD諮問委員会(稲垣精二委員長)は6月30日、東京・大手町の経団連会館で2025年度総会を開催した。オンラインで出席した経済協力開発機構(OECD)の武内良樹事務次長から、自由で開かれた国際経済秩序の再構築に向けたOECDの役割について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

昨今、世界で分断と不確実性が増すなか、OECDは開放性と協調の重要性を加盟各国に呼びかけつつ、貿易に関して次の3本柱の戦略を提示している。

■ 第1の柱「レジリエントなサプライチェーンの構築」

世界的に重要品目の輸入依存度が高まるなか、OECDは単純な国内回帰ではなく、Agile(機敏性)、Adaptable(適応性)、Aligned(整合性)という「トリプルAアプローチ」(注)に基づく柔軟かつ協調的なサプライチェーンの構築を推進している。

その実現のカギは、貿易の円滑化や、物流や金融サービスの強化、デジタルとフィジカルの両方のインフラ投資の促進、国際協調である。

リチウムやコバルトなどの重要鉱物資源への安全なアクセスも、サプライチェーンのレジリエンスを支えるうえで重要な課題である。

OECDは重要鉱物資源に対する輸出制限措置の動向をモニタリングするとともに、輸出を制限する国との対話の場を提供することで、サプライチェーンのレジリエンスの強化を促している。

■ 第2の柱「デジタルおよび持続可能な貿易の促進」

近年、経済のデジタル化に伴い、デジタル貿易が拡大している。OECDは、デジタル貿易の障壁を削減することができれば、国単位での輸出は平均で53%増加する可能性があると試算している。

しかし現状では、各国の規制の断片化やデータローカライゼーション等がデジタル貿易を阻害している。

OECDは首尾一貫した将来志向の通商政策の実現に向けて、国際協調の重要性を訴えつつ、個人情報以外のデータの流通に関わる政策が企業活動に与える影響について分析している。

デジタル化と持続可能性は不可分の関係にある。OECDは、脱炭素化に資する財・サービスの貿易促進や、循環型経済に対応する貿易政策整備、環境補助金政策の透明化といった施策を通じて、持続可能な経済への移行を後押ししている。

■ 第3の柱「ルールに基づく国際貿易体制の支援」

OECDは世界貿易機関(WTO)との協力を強化している。例えば、電子商取引に関する交渉プロセスで分析的な知見を提供している。

その他、保護主義の高まりや交渉の停滞により多国間貿易体制がますます圧力を受けるなか、サービス貿易制限指数(STRI)や、製造業グループおよび産業法人データベース(MAGIC)などのエビデンスの提供を通じて政策決定を支援している。

こうした3本柱の戦略以外にも、国際経済を健全に機能させるための取り組みを展開している。各国が金融市場の開放性を維持しつつ、潜在的な脆弱性を管理できるよう支援するため、資本移動の自由化に関するコードを通じて、金融の開放性と安定性の両立を図っている。

また、国際課税ルール全体を見直し、近代化させるBEPS(Base Erosion and Profit Shifting=税源浸食と利益移転)プロジェクトを145以上の国・地域と共に推進している。

■ レジリエントな国際秩序の構築に向けて提唱する五つの原則

分断と不確実性が増す世界情勢に立ち向かい、より開かれたレジリエントで包摂的なグローバル経済秩序の再構築に向けて、OECDは五つの原則を提唱している。

(1)多国間主義の強化(2)開かれた市場の維持・強化(3)システミックなレジリエンスの構築(4)発展途上国や中小企業にも利益をもたらす包摂性の確保(5)制度やエビデンス、国際的枠組みへの信頼醸成――である。

この原則に基づき、OECDは引き続き「Better Policies for Better Lives(より良い政策を通じたより良い生活)」の実現を目指していく。

(注)Agile(機敏性)=混乱が起きたときに迅速に対応できるサプライチェーン、Adaptable(適応性)=新たな課題に応じて進化を続けるサプライチェーン、Aligned(整合性)=サプライヤー、政府、NGOなどから成るネットワークが同じ目標に向かって連携するサプライチェーン

【国際経済本部】

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