
ポッティンジャー氏
経団連は6月19日、東京・大手町の経団連会館で、米国・第1次トランプ政権で国家安全保障担当大統領副補佐官を務めたマット・ポッティンジャー氏(現ガルノーグローバル共同創業者)との懇談会を開催した。経団連からは、鈴木健史中国委員会企画部会長をはじめ28人が出席した。ポッティンジャー氏から、中東情勢を巡る米中の対応や米国の通商政策等について説明を聴くとともに意見交換した。概要は次のとおり。
■ 中東情勢の緊迫化と米中の対応
中東情勢が緊迫化するなか、米国による軍事介入の蓋然性が高まっている。第1次トランプ政権時、化学兵器の使用、テロ行為の実施、米国人に対する直接的危害といった特定の条件が満たされた際、米国は軍事行動に踏み切っていた。これを踏まえると、今回も米国がイランの核関連施設などを攻撃する可能性は否定できない(注)。
一方で中国は、イランの最高指導者アリ・ハメネイ師が失脚し、イランの体制が不安定化する可能性を強く警戒している。特にイランおよびシリアという中東における戦略的同盟国の弱体化は、中国およびロシアにとって地政学的損失となり得る。
■ 中国内政および中台両岸関係の行方
中国国内では、軍指導部に対する粛清が相次いでいる。共産党中央軍事委員会の主要メンバーのうち半数は失脚した。
これは、習近平国家主席による強権体制を象徴する動きと受け止められており、習政権の任期満了に向けて台湾有事のリスクが高まっている。
軍事的圧力に加え、台湾に対する関税措置や輸出管理の強化など経済的圧力を強める可能性もあり、国際経済への影響が懸念される。
■ 日米関税交渉の見通し
トランプ大統領は関税政策に固執しているため、今後も不確実な通商環境が継続するだろう。
日本にとって自動車産業は、米国との関税交渉における最重要分野の一つである。トランプ大統領は、日本の米国車輸入の少なさを問題視しているため、自動車分野で一定の合意が得られれば、日米交渉は大きく進展するだろう。
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意見交換では、参加者から、6月に実施された米中通商協議への評価について質問があった。これに対しポッティンジャー氏は、米中間の制裁措置の応酬を注視しつつ、日本は、安全かつ代替的なサプライチェーンの構築を米国側に提示することで、日米交渉を優位に進める余地があるとの見解を示した。
米国によるイラン攻撃が中台関係に与える影響についての質問に対しては、米国が中東紛争に中長期的に関与する場合、台湾有事のリスクが一層高まり、その発生時期も早まる可能性があるとの認識を共有した。
(注)6月21日(米国時間)、米国はイランの核関連施設を攻撃した
【国際協力本部】