
相川氏
経団連は7月4日、東京・大手町の経団連会館で宇宙活動法改正に関する説明会を、佐藤智典宇宙開発利用推進委員会企画部会長、山品正勝同宇宙利用部会長の進行のもと開催した。内閣府宇宙開発戦略推進事務局の相川祐太企画官から、宇宙活動法改正に係る現在の検討状況と今後の予定について説明を聴いた。概要は次のとおり。
■ 宇宙活動法改正に係る最近の動き
政府は、宇宙基本計画工程表の改訂に向けた重点事項を決定し、そのなかで宇宙活動法の改正案について次期通常国会への提出を目指すとしている。
同様に、6月13日に公表された「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025年改訂版」と「経済財政運営と改革の基本方針2025」(骨太方針2025)でも、同様の方針を盛り込んでいる。
国内の打ち上げ能力の強化に向けた、基幹ロケットの高度化・高頻度化、民間企業のロケット開発の取り組みを進めるとともに、現行法の改正により、民間企業による有人やサブオービタル飛行等の新たな宇宙輸送が可能となることを目指す。
同時に、海外での打ち上げ活動への対応、ロケットや衛星の包括許可制度の導入、安全性確保のための政府補償制度の対象拡大、事故報告制度の整備も検討課題となっている。
■ 法制化に向けた取り組み状況
「宇宙活動法の見直しに関する小委員会」は、企業や研究機関、学識経験者等の参画を得て、中間取りまとめを行った。
そこでの報告を受け、先日、宇宙活動法の制度見直しに係る技術的検討を行うため、「宇宙活動法改正ワーキンググループ」を設置し、6月に第1回会合を開催した。
論点としては、大きく(1)航空法との関係(2)宇宙物体に関わる整理(3)許可制度全体の見直し――の3点に分けて議論を進めている。
(1)の論点では、現行の国内法ではサブオービタル飛行が宇宙活動法の適用対象とならず、航空法の適用対象か必ずしも明確ではない。諸外国の先行事例を踏まえ、サブオービタル機や高高度気球等について法律の対象とする場合には、他法令との二重規制を避けるよう整備していきたい。
(2)の論点では、通信機能等を有しないモニュメント的物体の打ち上げも進むなか、現行法上の「人工衛星」の定義だけでは対応困難との認識から、「宇宙物体」という新たな概念の導入も視野に入れる必要がある。
(3)の論点では、現行法上では、サブオービタル飛行、気球等からの打ち上げ、制御や通信機能がない物体、再突入等については、明確に許可制度の対象となっていない。このような許可制度の対象や保護法益の整理、政府補償制度など、制度全体の見直しが今後の焦点となっている。
■ 事故報告制度案
許可された打ち上げ等で発生した事故に関しては、当事者に報告を求め、原因を究明し、情報共有やルールの見直し等を通じて再発防止に努め、宇宙産業への内外の信頼を確保する必要がある。
その一環として検討している事故報告制度は、許可を受けた打ち上げ等で、許可時点で想定されていない事故や重大インシデントが発生した場合、事業者に報告を義務付けるものである。その検討に当たっては、安全性と透明性を高めるとともに、事業者の負担も考慮した制度・運用となるよう留意している。
【産業技術本部】