
中村氏
経団連のデジタルエコノミー推進委員会企画部会(村上明子部会長)は7月3日、東京・大手町の経団連会館で電波政策の動向に関する説明会を開催し、総務省情報流通行政局の中村裕治情報通信政策課長(前総合通信基盤局電波政策課長)から、説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。
■ 5Gインフラ整備の推進
電波は周波数帯により特性が異なる。低周波数帯は広域をカバーしやすい半面、通信容量が少ない。一方、高周波数帯は通信容量が大きい半面、通信範囲が狭い。5Gは、サブ6やミリ波と呼ばれる高周波数帯を活用して大容量・高速等を目指す通信方式であるものの、これら高周波数帯の基地局整備は十分に進んでいるとは言い難い。
そこで総務省は、2027年度までに高トラフィック地域でのサブ6のカバー率を80%、ミリ波基地局数を5万局とする目標を掲げている。
企業や自治体等が自らの施設や敷地内に構築する「ローカル5G」の海上利用・上空利用を可能とする制度を整備してきたほか、ローカル5Gの免許手続きの簡素化や取得の迅速化に向けた検討も進めている。
■ NTN実現に向けた制度整備
衛星通信などの非地上系ネットワーク(NTN)技術が急速に進展しており、特に衛星通信は1990年代と比べ、通信速度が数万倍に向上している。
高度数百キロメートルの低軌道に多数の人工衛星を配備する「衛星コンステレーション」は、高速・低遅延・低電力の通信を実現できるため、災害時のバックアップ通信としても注目が高まっている。すでに日本企業も海外の事業者と提携し、国内でのサービス展開を始めている。
加えて、成層圏に基地局を展開する高高度プラットフォーム(HAPS)も2026年の国内サービス開始を見込んでいる。
総務省はこうした地上と空を一体で活用する次世代通信インフラの制度整備を推進していく。
■ ドローンの利用拡大に向けた取り組み
さまざまなシーンでドローンの利用が進むなか、5.2ギガヘルツ帯無線LANの上空利用が24年4月に制度化され、農業やインフラ点検などでの活用が期待されている。
海外製ドローンに多い5.8ギガヘルツ帯についても、同周波数帯を利用するETCシステムに影響を与えない範囲で、使用エリア等を限定(高速道路からの離隔を確保するなど)した実験運用を推進するための制度を整備した。
総務省は、今後もドローン利用の多様化に向け、制度整備を進めていく。
■ 電波法および放送法の一部を改正する法律の主な内容
近年、通信トラフィックが急増するなか、低周波数帯はすでに飽和していることから、今後は6ギガヘルツ超の高周波数帯域の活用が不可欠となる。そこで、多様な事業者の参入を促すべく、25年4月に電波法を改正し、6ギガヘルツ超の高周波数帯に価額競争(いわゆる周波数オークション)を導入することとした。
この法改正により、無線局免許状等のデジタル化や、災害時に備えた基地局の強靭化に対する電波利用料を活用した補助金の交付等が可能となった。
【産業技術本部】