経団連は7月2日、東京・大手町の経団連会館で「トランプ政権下の米国投資に関する懇談会」を開催した。米国・メイヤー・ブラウン法律事務所の村瀬悟パートナー、伊藤嘉秀パートナー、ケヴィン・シェリダン・ジュニア パートナー、ルパート・バロウズ パートナー、小林英二パートナー、およびジャパン・アクティベーション・キャピタルの田村晃一顧問を来賓に迎えた。トランプ関税をはじめとする主要政策のもとでの米国への投資とM&Aについて、実例を含めた実務的なアドバイスを聴いた。概要は次のとおり。

左から小林氏、バロウズ氏、シェリダン氏、伊藤氏、田村氏、村瀬氏
■ トランプ政権の施策と対米投資への影響
第2次トランプ政権の発足後、米国では目まぐるしい変化が起きている。トランプ大統領は第1次政権退陣後、バイデン政権の間、時間をかけてさまざまな施策を検討していた。そのため、就任後1カ月目に署名した数多くの大統領令の内容は非常に練られたものだった。
今後も2026年に予定される中間選挙に向けて、関税・物価などでさまざまな動きが出てくることが予想される。不確実性が高まるが、「不確実性にどう向きあうか」を検討しておく必要がある。
関税交渉は、米国から期限が一方的に設定されているが、仮に期限内に合意したとしても、交渉はその後も続くと想定される。関税を中心に、不確実性はトランプ政権の間続くだろう。
現在、連邦議会では「一つの大きく美しい法案(OBBB)」が審議されている。上院を通過し、近日中に下院でも可決し、成立すると見込まれる。これにより米国への投資の機運が再び高まることが期待される。日本企業はこれまでの経験を踏まえ、「大胆に勇気と自信を持って対応すること」が重要である。
エネルギー政策について、バイデン政権下では液化天然ガス(LNG)に関するプロジェクトが停止していたが、第2次トランプ政権になって再び動きだした。原子力発電プロジェクトなども活発化する可能性があり、日本企業にとって大きなビジネスチャンスになるだろう。
■ 日本経済界への助言
00年からの25年間を振り返ると、エンロン事件、ITバブルの崩壊、リーマンショック、新型コロナ禍など、われわれは不確実性が高い状況に数多く直面してきた。今回も、不確実性を所与のものとして受け入れることで、現状を好機と捉えることができる。
M&A市場でも、不確実性の高まりとともに、買い手の交渉力が高まっている。そうしたなか、日本企業は海外から信用力ある買い手と見られており、自信を持って現在の状況に対応してほしい。
米国政府への対応を検討することも有効である。例えば今後、自社が扱う製品等に米国から高関税が課された場合は、米国の経済や雇用への自社の貢献、自社ビジネスが米国民の安全や健康の確保につながっていることを米国政府に示すことで、適用除外の道を模索することが考えられる。
投資については、同盟国・パートナー国の対米投資の促進に向けて、対米外国投資委員会(CFIUS)による対米投資案件審査の「ファストトラック制度」が試験運用されている。自社の投資が同制度の安全保障条項をクリアできることを示すべく、必要な情報を整理するなど準備しておくことが重要である。
【国際経済本部】