経団連は7月9日、東京・大手町の経団連会館で宇宙開発利用推進委員会(漆間啓委員長)の2025年度総会を開催した。24年度活動報告・収支決算および25年度活動計画・収支予算を承認した。
総会議件に先立ち、内閣府宇宙開発戦略推進事務局の風木淳事務局長から、わが国が目指すべき宇宙政策等について説明を聴いた。概要は次のとおり。
■ 宇宙政策に関する政府の体制・宇宙関係予算
政府は、内閣総理大臣を本部長とする宇宙開発戦略本部のもと、宇宙を「成長と安全保障」の要と位置付け、宇宙基本計画と宇宙安全保障構想を策定するとともに、関係府省・宇宙航空研究開発機構(JAXA)等が一体となって取り組む体制を構築している。また、宇宙基本計画工程表に基づき、各施策は着実に実行され、官民連携によりロケットや衛星の開発・打ち上げ等が進んでいる。
予算面では、令和7年度当初予算および令和6年度補正予算で、宇宙関係予算9365億円を確保した。このうち宇宙戦略基金の事業として、3000億円(令和6年度補正)が追加措置され、25年度中に全テーマの公募開始を予定している。
こうしたなか、多様な民間企業による宇宙関連の事業化が加速するなど、総じて国民の関心が高まっていると感じている。
■ 宇宙政策を巡る環境認識と重要な取り組み事項
宇宙政策を取り巻く環境は、国際情勢の変化や技術革新の進展により急激に変化している。政府は、こうした状況に対応していくために、次の六つの重点事項を軸に政策を展開している。
第一は、変化する安全保障環境下における宇宙空間の利用の加速である。ウクライナ危機では米国「スターリンク」が通信インフラを支えたように、高い情報収集・通信能力を有する宇宙システムの重要性が急速に高まっている。わが国も27年度までに衛星コンステレーションを構築し、情報収集力を抜本的に強化する必要がある。
第二は、経済・社会の宇宙システムへの依存度の高まりである。各国は測位衛星の整備を進め、その利活用を進めている。わが国でも能登半島地震で、衛星データが被災地の状況把握に活用された。準天頂衛星システムを7機から11機体制に拡充するために検討・開発を進めるとともに、国内スタートアップ等が提供する衛星データを関係府省で積極調達・利用する方針である。
第三は、宇宙産業の構造変革である。2040年の世界の宇宙市場規模は1兆ドルを超えるとの予測もある。わが国は、「宇宙戦略基金」の活用により、民間企業による技術開発への支援を強化・加速する必要がある。
第四は、月以遠の深宇宙を含めた探査活動の活発化である。アルテミス計画に貢献し、日本人宇宙飛行士の月面着陸を目指すとともに、ポスト国際宇宙ステーション(ISS)に向け、技術開発への支援や、関係国等との調整を加速することが重要である。
第五は、宇宙へのアクセスの必要性の増大である。H3ロケットなど基幹ロケットによる打ち上げ能力の高度化や高頻度化、民間ロケットの開発支援を加速し、2030年代前半までに官民で年間30機程度の打ち上げを目指す。同時に技術革新に伴って登場した新たな宇宙輸送形態を実現すべく、宇宙活動法の改正に向けて議論を進めている。
第六は、宇宙でのリスク・脅威の増大である。軌道上の混雑等により、宇宙ゴミ(デブリ)等への衝突リスクが増大し、宇宙空間における安全かつ持続的な利用を妨げるリスク・脅威が深刻化している。このため、国際ルールの整備とデブリ対策の技術開発が急務である。
■ 宇宙技術戦略・宇宙戦略基金
24年3月に策定された「宇宙技術戦略」は、衛星、宇宙科学・探査、宇宙輸送、共通技術を分野ごとに分析し、技術ロードマップを含んだ戦略である。同戦略は、国内外における最新の技術開発動向を踏まえたものとするため、25年3月に改訂している。
「宇宙戦略基金」は、民間企業・大学等による先端技術開発、技術実証、商業化を支援すべく、複数年度にわたって取り組めるようにしたものである。特に、非宇宙のプレーヤーの参入や技術開発への支援に加え、政府によるアンカーテナンシーを確保することで、民間企業の事業展開の好循環の実現を目的に、第1期では22テーマ、第2期では24テーマを設定している。
【産業技術本部】