経団連は7月16日、東京・大手町の経団連会館で経済法規委員会競争法部会(大野顕司部会長)を開催した。公正取引委員会の岩下生知経済取引局総務課長、鈴木健太官房参事官、池澤大輔経済取引局総務課デジタル市場企画調査室長、織田佳哲同室長補佐から、「生成AIに関する実態調査報告書ver.1.0」の内容および「スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律」(スマホソフトウェア競争促進法)の概要について、それぞれ説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

左から池澤氏、鈴木氏、岩下氏、織田氏
■ 生成AIに関する報告書
公取委は6月6日、「生成AIに関する実態調査報告書ver.1.0」を公表した。同報告書は、2024年10月に公表したディスカッションペーパー「生成AIを巡る競争」に寄せられた情報や意見を基に、要点を絞って取りまとめたもの。「ver.1.0」としたのは、最終報告書ではなく、今後も調査と情報の更新を継続していくためである。
同報告書では、生成AI関連市場の構造を「インフラストラクチャー」「モデル」「アプリケーション」の三つのレイヤー(層)に分類し、各層における競争の実態を分析している。
インフラストラクチャー層では、生成AIの開発段階に応じた競争状況や、データの需要による優位性の違い、専門人材の流動性などが明らかになった。
モデル層では、大規模言語モデルと特定用途のモデルの競争優位性が示されている。
アプリケーション層では、多様な事業者が参入し、競争が激化している実態が示されている。
三層にまたがる重要事項として、クラウドサービス、開発環境等の切り替え・移行、オープンソースとクローズドソース、パートナーシップがあり、各事項に関する競争政策上の意見が挙げられている。
生成AIを巡る独占禁止法や競争政策上の論点として、特に意見が寄せられたのが、「アクセス制限・他社排除」と「抱き合わせ」である。「アクセス制限・他社排除」については、モバイルOSのアクセス制限を懸念する意見が寄せられた。「抱き合わせ」については、既存のデジタルサービスと生成AIプロダクトの統合に関する意見が寄せられた。
公取委は今後も生成AI市場の動向を注視し、実態調査を継続していく。企業の皆さまには情報提供やヒアリングなどへの協力をお願いしたい。
■ スマホソフトウェア競争促進法
スマホソフトウェア競争促進法が25年12月18日に全面施行される。同法は、スマートフォンの特定ソフトウェア(モバイルOS、アプリストア、ブラウザ、検索エンジン)に関する公正かつ自由な競争を促進し、国民生活の向上と経済の健全な発展に寄与することを目的としている。
スマートフォンの特定ソフトウェアの市場は、少数の有力な事業者による寡占状態にあり、公正かつ自由な競争が妨げられている。新規参入による是正が困難であり、独禁法に基づく個別の対応では立証活動に長い時間を要するという課題がある。
そこで同法は、スマートフォンの特定ソフトウェアについて、競争環境の整備を目指している。セキュリティを確保しつつ、競争を通じて、多様な主体によるイノベーションが活性化し、消費者が多様なサービスを選択できるようにする必要がある。
同法では、特定ソフトウェアを提供する指定事業者に対し、九つの禁止行為と五つの遵守行為を定めている。指定事業者やアプリ事業者等のステークホルダーと継続的に対話しながら、ビジネスモデルの改善を求めていく。
公取委は、同法の全面施行に向け、政令、規則、ガイドラインなど下位法令の整備に着手している。経済界には、同法を的確に運用していくために、積極的な情報提供をお願いしたい。
【経済基盤本部】